【脂質異常症の苦手意識を克服したい方!】これを読めば大丈夫かも?

内因経路内分泌代謝

前回投稿(サラダ油の特集)で、脂質異常症について投稿すると申し上げましたので、今回から脂質に関する投稿となります。ちょっち、長くなりましたが我慢してくださいね。

コレステロールと中性脂肪は、生命維持に不可欠!

健康診断の血液検査で行われている脂質の検査には、コレステロール中性脂肪(TG/トリグリセライド)があります。脂質というと、肥満や動脈硬化の根源であるとの印象から、マイナスイメージを持つ方も多いと思いますが、脂質は私たちの生命維持には欠かせない重要な働きをしています。

黒板

 

コレステロールや中性脂肪の異常値治療薬理解する上で、下図の「リポ蛋白の動態」を理解することは極めて重要です。

リポ蛋白の動態

「ん~、図を見ても、何となく突っ付きにくいなぁ~」「何回やっても頭に入らないよ!」という方、多いのではないでしょうか? なぜなら、中学高校の授業では、糖とタンパク質について深く学習しますが、脂質の消化や代謝についてはそれほど詳しい授業もなく、テストでもそれほど多く出題された記憶がありませんからね。

 

今さら聞けない脂質の知識

そこで今回は、脂質のアレコレについてこっそりと勉強したいと思います。

脂質の消化

 

成人男性1日の摂取カロリーを2,200kcalとすると、その半分の1,100kcalは体内電池であるアデノシン三(トリ)リン酸(ATP)の製造に費やされますリン酸を1個切り離すことで筋肉が動くのですから、まさに人間も電池で動いているということですね。

脂質1gが発するカロリーは9 kcalと高く、取り過ぎには注意が必要です。ちなみに、エタノール1gが発するカロリーは7 kcalで、糖や蛋白質より高いことを知っておくべきです。計算上、缶ビール3本飲むと約40gのエタノールを摂取することになり、1日摂取量の8分の1をお酒で賄ってしまうことになります。だからと言って、日本人から揚げ物とビールを取り上げたら、暴動が起きると思いますがねぇ~。「わかっちゃいるけど止められない」のが人間なんですよね。

 

脂肪の吸収

脂質は膵臓から出てくる水溶性の消化酵素(リパーゼ)によって消化されますが、相手が油の状態では水溶性の酵素は太刀打ちできません。これを解決してくれるのが胆汁酸です。胆汁酸は、まさに洗剤と同じで界面活性剤として働きます。脂肪はミセルとなり乳化(細かくなって水に溶けた状態)されることで、膵臓のリパーゼが活躍できるのです。

胆汁酸は、コレステロールを材料にして肝臓で作られますが、約95%(一部が便や尿に排出される)が小腸下部(回腸末端)で水分とともに再吸収され、リサイクルされています。新しい便秘薬の胆汁酸トランスポーター阻害薬グーフィス(エロビキシバット)は、ここに作用するお薬でしたよね。グーフィスが、胆汁酸の回収率約95%をどれくらい落としてしまうのか?興味がありますが、落とし過ぎないように、1日3錠(15mg)までに制限されているのでしょうか?

コレステロールは、細胞膜、ステロイドホルモン、胆汁の成分として、生命維持に欠かせない重要な物質ですが、その摂取については、食事から約2割、体内合成で約8割となっています。積極的に食べる必要はないのです。

 

リポ蛋白の登場

 

コレステロールや中性脂肪は、脂質なのでそのままの形では水分の豊富なリンパ液や血液に混ざることはできません。そのため、アポ蛋白という「水先案内人の助け」を借りてリンパ管や血管中を移動ることになります。水溶性であるアミノ酸グルコースは、門脈を通って逃げるようにさ~っと肝臓に到達しますが、脂質はリンパ管→静脈→心臓→動脈という長い旅を経て肝臓に辿り着くのです。ただ苦労して旅をするのではなく、細胞にエネルギーの源(脂肪酸)を渡しながらですから、ん~、これぞ神対応ですな。

バス・タクシーをイメージした世界初⁉の説明

私の勝手な思いですが、リポ蛋白は、体内輸送を担う「乗り物」で、アポ蛋白は、乗客であるコレステロールや中性脂肪(TG)を隅々まで運んでくれる「運転手」と捉えてイメージ図を作りました。
以前投稿した「軍隊をイメージした免疫システム」続く第二弾で、「バス・タクシーをイメージした」脂質の説明は世界初⁉です。 (世界初は大げさじゃろ!) 前と同じ突っ込みか~い。

リポ蛋白の表

前に示した「リポ蛋白の動態図」のとおり、リポ蛋白は、カイロミクロン、カイロミクロンレムナント、VLDL、IDL(レムナント)、LDL、HDL という動態があります。

レムナントとは「残余物・残部」という意味で、カイロミクロンが肝臓に向かう途中、あるいは VLDLがLDLに至る途中の中間代謝産物ということになります。通常、レムナントは、速やかに代謝されるため、血液中にはわずかしか存在しません。

外因性経路

リポ蛋白の代謝は、外因性経路内因性経路の大きく2つに分けることができます。
食事由来(外因性)の中性脂肪等の脂質は小腸から吸収され、カイロミクロンとなり全身の組織へ運ばれます。

 

カイロミクロン

 

カイロミクロンは、中性脂肪(TG)を多く含んでおり、TGは、血中を流れる長い旅のうちにリポ蛋白リパーゼ(LPL)により、グリセリンと脂肪酸に分解されます。放出された脂肪酸はアルブミン(アポ蛋白)にキャッチされて、細胞、脂肪細胞、筋肉に配達されます。残ったグリセリンは、肝臓に運ばれ、再度、TGの合成等に使われます。

 

カイロミクロンレムナント

こうした過程で、カイロミクロンの粒子は小さくなり、コレステロールの割合が増したカイロミクロン レムナントという状態で肝臓に到着します。まるで田舎のバスが、最終のバス停に到着する様に似ていますね。地方のバスって、終点近くでは、ほとんど乗客が乗っていないのですよ。

 

内因性経路

肝臓では(内因性の)コレステロールと中性脂肪が合成され、VLDLが形成され血中に分泌されます。このVLDLはリポ蛋白リパーゼ(LPL)により代謝されIDL(レムナント)となり、更に肝性リパーゼ(HTGL)の作用を受けLDLへ代謝されていきます。LDLは末梢組織にてLDL受容体を介し取り込まれ、コレステロールを供給します。(大事な仕事をしているのに悪玉呼ばわりは可哀そうです!) 役目を終えたLDLは肝臓に取り込まれ回収されます。

体内に胆汁酸やHDLが少なくなると、肝臓はその不足分を補おうと、コレステロールを活発に消費するようになります。材料調達のため、肝臓はLDL受容体を増やし、末端にあるLDL を呼び寄せます。その結果、体内のLDLが減少するとともに、胆汁酸とHDLが上昇します。脂質異常症治療薬の中には、LDL受容体の合成促進に作用するものが多数あります。

 

内因経路

LDL、HDLとはそれぞれ、Low Density Lipoprotein(LDL=低濃度のリポタンパク質)、High Density Lipoprotein(HDL=高濃度のリポタンパク質)の頭文字で、脂肪を運搬するリポ蛋白「乗り物」のことを指します。一方、健康診断でよく見るLDL-C(コレステロール)、HDL-C(コレステロール)は、LDL、HDLに含まれているコレステロール(乗り物に乗っている乗客)を示します。厳密に言えば「HDL」と「HDLコレステロール」とは違いますので、時と場合によっては、キッチリと使い分けましょうね。

LDLコレステロール(乗客)は本来、細胞内に取り込まれて、ホルモン産生、細胞膜の形成などの役割を担います。しかしながら、血中にLDL(乗り物)が多く存在すると、LDL(乗り物)が酸化・変性して血管壁に沈着、蓄積し、血管の壁で炎症反応を起こして血管の内壁を傷つけます。動脈硬化に起因する心筋梗塞や脳梗塞などの誘引となることが知られているため、通称「悪玉コレステロール」と言われます。重要な仕事をしているのに「悪玉」とは、残念!

対照的に、HDL(乗り物)は、組織に蓄積したコレステロールの除去、抗酸化作用、血栓予防作用、血管の内壁の維持、血液を固まりにくくする作用で、動脈硬化を防ぐ作用があると考えられています。こうしたことから、通称「善玉コレステロール」と言われます。

HDLとHDLコレステロール、LDLとLDLコレステロールが異なることを知っていれば「善玉コレステロール」や「悪玉コレステロール」が何であり、何をやっているのかが分かるはずです。

コレステロール逆転送系

HDLは、動脈硬化が起こっている場所(プラーク)からコレステロールを引き抜き、肝臓へ転送します。 この経路は「コレステロール逆転送系」と称され、生体に存在する抗動脈硬化メカニズムの一つです。患者の「コレステロール引き抜き能」がどれだけあるか?  その機能の強弱を放射能を用いて測定する研究も進んでいます。

コレステロール逆転送系

上記の「引き抜き作用」以外に、HDLには、次のような動脈硬化を予防する機能があります。

内皮機能改善機能…血管の内皮細胞を守り血管のしなやかさを保つ
抗酸化機能…酸化のストレスから細胞を守る
抗炎症機能…炎症から細胞を守る

HDLの抗動脈硬化作用を向上させるには、HDLに含まれるコレステロールの量(乗客)を増やす(引き抜く力を増強する)よりも、HDL自体(乗り物)の機能を向上させることが重要であるという考え方があるようですが、どちらにせよ、画期的な新薬の登場に期待したいものです。

最終チェック!

駆け足で脂質を勉強しましたが、最初に提示した図をスラスラ説明できたら卒業です。
次回からは、脂質異常症治療薬の投稿となりますので、よろしくお願いします。

最終チェック

 

 

 

 

 

コメント