三叉神経に発現した帯状疱疹!手遅れにならないために注意することは?

サムネイル① 感染免疫

前回の「実録 大腸カメラの悲劇」に続き、『実録キョワ~イ話』の第三弾です。
帯状疱疹の治療は、抗ヘルペスウイルス薬を服用し、治療開始が早ければ早いほど効果的で、発症から「3日以内に服用することが理想的だ」と言われています。

 

クスリの添付文書には「皮疹出現後5日以内の投与開始が望ましい」と書いてありますが、自覚できる程度に皮疹が拡大するまでには、1~2日を要してしまうと考えられます。

 

また、「腹部周りに出現する帯状疱疹」については迷わず皮膚科を受診すると思われますが、「三叉神経に出現する帯状疱疹」については、皮疹出現前に、これまで経験したことのない電撃痛や不快感を感じるため、受診科をどこにしようか迷ってしまいます。

 

こうしたことから、帯状疱疹であることに気づくのが遅れ、3日以内に抗ウイルス薬を服用できるのは、患者の約3分の1とされています。

 

サムネイル①

 

今回は、「三叉神経に出現した帯状疱疹」について、なぜ服用が遅れるのか?を私の体験談から検証したいと思います。

 

大腸カメラの一件からどうなったッて?

推測の域を超えませんが、大腸カメラのストレスと腸内フローラ―の喪失で私の免疫力はダダ下がりになったと思われます。その数日後、私の体に異変が生じたのでした。

サムネイル②

 

遅れる理由①  最初の兆しが小さくて気づかない‼

大腸カメラから一週間後の金曜日、朝起きると、右側の瞼が重く、右目の周辺に鈍痛があったため、「ものもらい」でもできたのかな~?と目の病気を疑いました。でも、瞼の腫れや赤みは全く見当たらず、眼科に行くような状況判断には至りませんでした。「そのうち治るだろう」と様子を見ることになりました。

 

サムネイル③

 

遅れる理由②  土曜日に発病すると、医者に行くのは火曜日になる⁉

翌日の土曜日、首筋に凝ったような痛みが出てきたのでモーラスのパップ剤を貼り付け、痛みが取れるのを待っていました。すると、右目の奥や右耳の奥の方に、発作的で一瞬(1~2秒)だけ痛む電撃痛が次々に現れました。

 

医療従事者であれば、このような痛みは「三叉神経のどこかに何らかの異変が起こっているはずだ」と容易に想像できるのですが、一般の患者さんだとこれまで経験したことのない電撃痛や不快感に驚くかも知れません。

 

ネット検索では、「帯状疱疹ウイルスが三叉神経を侵している」 あるいは、「長年の動脈の拍動が三叉神経を痛めつけている」 などの情報提供がありますが、皮膚症状が無いと皮膚科には行きづらくなります。

 

また、クリニックが激混みするのは「駆け込み患者が多い土曜日の午後」と「休診明けを待ちわびる月曜日の午前」となるので、土曜日に発病すると、どうしても「火曜日以降の受診でいいや」と思ってしまうのです。

 

脳外か眼科か

 

 

遅れる理由③  けっこうロキソニンが痛みをとってくれる…

医療上、ケシカランこととは承知していますが、帯状疱疹による不快な痛み(電撃痛、皮膚のピリピリ感、髪をとく時の鈍痛など)に対して、カロナール、ロキソニン、リリカを飲み比べてみました。

 

あくまでも個人の感想ですが、カロナールには抗炎症作用がないためか殆ど効かず、リリカ後遺症(帯状疱疹後神経痛)には有効なのでしょうが、炎症時にはあまり活躍してくれない(効くのに時間がかかる)という印象でした。 な~んでか?については前回投稿「人の痛みがわかる人」を参照願います。

 

一方、ロキソニンはよく効きました‼ もし、一般の患者さんが最初からロキソニンに頼ってしまえば、ますますクリニックへ行くのが遅れて、抗ウイルス薬の服用時期を逃してしまうと思われます。

 

 

皮膚科と脳神経外科、どっちでもいいので早く行くべし!

週をまたぎ火曜日になっても、まだ皮膚症状が出ていなかったので、とりあえず近所の脳神経外科クリニックへ行くことにしました。当然、脳外なので脳のCTを撮られましたが、幸い、脳本体には異常がありませんでした。しかしながら、「動脈の拍動によって三叉神経が痛めつけているかどうかは?MRIとCTの画像をもとに作成した特殊な3D画像でしか判らないよ」と言われました。

 

次に、脳外の先生は帯状疱疹が出ていないか注意深く診察し、右眉毛の上にあった微かなジュクジュクを見つけたのでした。

 

皮膚科へ行けば、帯状疱疹の検査キット(デルマクイックVZV)を用いて確定診断(口唇ヘルペスでないことも確認)をするそうですが、脳外の先生は一刻も早く抗ヘルペスウイルス薬を服用すべきと判断し、帯状疱疹による三叉神経痛と診断して「アメナリーフ」を処方してくれました。

 

アメナリーフの添付文書には、発病初期に近いほど効果が期待でき、「目安として皮疹出現後5日以内に投与を開始することが望ましい」と書いてあったので、私の場合、早い段階で抗ヘルペスウイルス薬に有りつけたのでした。

 

結果、皮膚症状も非常に軽く、今のところ、帯状疱疹後神経痛(PHN:postherpetic neuralgia)も出ていません。もちろん、鬼滅の刃のお館様のようにはなりませんでしたので、脳外の先生には感謝しています。

 

 

まとめ (抗ウイルス薬の服用が遅れる原因)

結論から言うと、「口唇ヘルペス」や「性器ヘルペス」は再発頻度が比較的高く、慣れた患者さんだとある程度の出現予知も可能だそうです。ところが、「帯状疱疹」は一生にかかる回数(頻度)が少なく、患者さんにとって初期段階に現れる症状に気づきにくいのです。

 

気づきにくい原因は、ウイルスによる炎症が神経節→神経→皮膚の順で起こり、自覚できる皮疹の出現が最後にやって来る場合が多いからです。

 

『前駆痛』を頭痛や肩こりと思って湿布や頭痛薬で様子を見ていた、あるいは『皮膚症状』が虫刺されかカブレだろうと思って市販薬を塗っていた、などの理由で抗ウイルス薬治療の機会を逸することが少なくないのです。

 

また、特徴的な帯状疱疹の皮疹と痛みが、教科書通りの場所であればよいのですが、まれに単純(口唇)ヘルペスとの見分けにくいこともあるようです。そのような場合、検査キットの診断が必要となり、皮膚科以外のクリニックでは診断が遅れる場合があるのです。

 

遅れる理由

 

 

「アメナリーフ」は1日1回で、用量調整なしで使える便利なクスリ

帯状疱疹の治療は通常、抗ヘルペスウイルス薬の服用となりますが、用量は単純ヘルペスよりも約3~4倍の量が必要となります。バラシクロビルは1回2錠(1000㎎)を、ファムシクロビルは1回2錠(500㎎)を、それぞれ1日3回、7日間服用します。

 

2017年には、新しい作用機序を持つ抗ヘルペスウイルス薬のアメナメビルが発売されました。これはウイルス特異的ヘリカーゼ・プライマーゼ阻害薬で、DNA合成の初期段階に働くヘリカーゼ・プライマーゼの活性を阻害します。

 

従来の抗ヘルペスウイルス薬は腎排泄性のため、腎機能低下の患者には減量投与が必要でしたが、アメナリーフ(アメナメビル)は主に糞便中に排泄されるため、腎機能を気にせずに使用できます。高齢者は腎臓機能が低下しているケースが多く、従来の抗ヘルペスウイルス薬の場合は、処方前に腎機能を調べて用量を調節する必要がありました。

 

アメナリーフ(アメナメビル)はそのような調整の必要がなく、1回2錠(400㎎)を1日1回、7日間服用します。1日1回の服薬で済むこともメリットとなり、帯状疱疹の治療薬として普及しています。

 

ただし、3割の保険適用で6,000円近くの患者負担となりますので、くれぐれも無駄にならないよう、早い段階で服用して欲しいものです。(添付文書には「目安として皮疹出現後5日以内に投与を開始することが望ましい」と書いてあります。)

 

また、服薬指導としては「空腹時に服用すると効果が弱まるのでお急ぎの場合は、ビスケット1枚でもいいので食べた後に服用してください。」と注意しなければなりません。

 

 

 

くすりのレビュー、国家試験の勉強に役立つYouTube動画

yakulab info 下田武先生
抗ヘルペスウイルス薬:11分20秒

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