肥満の首謀者は脳。だから「ゼロ肥満」でなく「ウィズ肥満」で行こう!

脳と肥満 OTC

 

脳と肥満

 

石器時代のような大昔には、飽食の時と飢饉の時が交互にやって来て、食糧が豊富なうちにできるだけ多くのエネルギーを体内に蓄えて、人類は生き残ってきたと考えられます。

 

そのため人間の脳は、体内に脂肪として貯めやすい「美味しくて高カロリーな食べ物」を好むように進化したと言われています。

 

つまり、肥満の原因は、高カロリーの食べ物を好む遺伝的習性が現代人にも引き継がれ、石器時代のように体を動かすことなく、脳の欲求のままに高カロリー食を簡単に入手できてしまうことが問題なのです。まさに、太古から引き継がれた遺伝子と現代生活とのミスマッチによって肥満が引き起こされていることになります。

 

私たちの脳が「高カロリー食を脂肪として蓄積せよ!」と命令している以上、その命令にあらがうことは容易ではありません。それほど肥満を敵視せず、「ゼロ肥満でなく、ウィズ肥満で行こう!」という寛容な精神を受け入れたらどうでしょうか?

 

肥満と肥満症は違うんですよ

現代社会では、「やせたい」という願望を持つ人が非常に多く、中にはダイエット運動を通り越して「やせ薬」に頼りたいという人がいるようです。

 

日本においては肥満症(肥満度が+70%以上またはBMIが35以上)に適用となる処方薬「サノレックス」がありますが、対象となる人は一握りの患者さんで、「ちょっと太っているな~」という肥満レベル(BMIが25程度)では絶対に処方されない薬です。

肥満症とは

 

サノレックスの有効成分である「マジンドール」は、摂食行動を制御している「視床下部」に働き、脳に満腹感を覚えさせて食べる量を減らす仕組みになっています。また、化学構造は異なりますが、覚せい剤である「アンフェタミン」にもよく似た作用があることから、「このような薬は、気軽に使用できないヤバイ薬である」ことは察しがつきます。

 

 

ホントは推奨したくない市販のダイエット薬って?

「飲むだけで痩せれる夢のような薬はない」と知りつつも、運動や食事とあわせて、少しでもダイエットの足しになるのではないか?と、市販薬を求める人は大勢います。

 

市販薬で有名なのは「ナイシトール」「コッコアポ」「ビスラット」ですが、その正体は漢方薬で、それぞれ「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」「防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)」「大柴胡湯(だいさいことう)となっています。

 

3大ダイエット薬

 

その中でも「ナイシトール」シリーズは全てが「防風通聖散」で、「ナイシトールZα」は満量処方(医療用の漢方製剤を超えないMaxの処方量)となっています。

 

ご承知のとおり、防風通聖散は比較的副作用が多いといわれる漢方薬で、多くの薬剤師が「ダイエット薬」と呼ぶことに躊躇し、積極的には推奨したくない事情があります。

 

副作用の具体例としては、過去に病院で処方された「防風通聖散」を服用して発熱した患者が、カタカナの「ナイシトール」を防風通聖散と知らずに服用して高熱が出たとか、虚証の人が服用した結果、強い倦怠感が出たとかという報告があります。

 

また、漢方においては、量を多くすればよく効くという訳ではありません。服用量と効果に関する科学的データーが乏しいため、単に満量処方の商品を勧めればよいという訳でもありません。

 

 

でも、販売拒否はできないので基礎的なことは覚えよう

まずは実証と虚証の見極めを

実証と虚証について

「実証」と「虚証」は病気に対する抵抗力の強さを意味し、ざっくりと言えば、体が丈夫でエネルギッシュな人は実証、体が弱い人は虚証となります。

 

証に応じて適正な薬を選択しよう

実証と虚証を踏まえたうえで、以下の分類から薬を選択して、セールストークをすることになるのでしょうか?

 

 

レコメンド表

 

ちなみに、「防己黄耆湯」にはダイオウが入っていないので、便秘のない方に向いています。一方、「防風通聖散」「大柴胡湯」には、ダイオウがそれぞれ1.5g、1g入っているので便秘のある方に向いています。

 

 

まとめ 「ちょっとポッチャリの方がいいのになぁ~」

 

コホート研究

 

「多目的コホート研究(JPHC研究)」の結果、BMIと死亡率との関係を表すグラフは、男女共に、アルファベットのU 字型になりました。死亡率が高い両端に位置するのは、極端に痩せている(シルエット①)と極端に太っている(シルエット⑦)の人たちです。一方、死亡率が低いボトムに位置するのは、BMIがが23.0〜24.9(シルエット④)の人たちになっています。

 

男性では、BMIが19.0〜22.9(シルエットの②と③)スリムな体形の人が望ましいと考えられていましたが、予想に反して、これらのグループの死亡率が高いことには驚かされます。

 

女性では、亡くなられた数が少なくうまくサンプリングができていない(●として表現できない)そうですが、BMIが25(シルエット⑤)を超えると死亡率が高くなる傾向が見られました。

 

グラフを見てのとおり、男性でも女性でも、肥満というよりは極端に痩せている人の死亡率が高いことが問題で、やはり石器時代から脳に刻まれた「エネルギーを貯め込んで生き抜け」という命令は正しいのかも知れません。

 

少なくとも中年男性においては、BMIが23〜26(シルエットの④と⑤)であるややポッチャリした体形の死亡リスクが低いということなので、世のおじさん達はそれほどダイエットに神経を尖らすことなく、明るく陽気に食事を楽しんだ方がよいと思うのですが…。

コメント