硬いウンチが、あのエルビス・プレスリーの命を奪ったってホント?

プレスリー ちょっと休憩

便秘で悩んでる人は大勢いて、厚生労働省のデータによれば「便秘の治療薬」を服用している人は国民全体の18%にもおよぶそうです。一方、「たかが便秘と言えども、便秘が命に関わる病状を誘発する」ということも近年の調査で分かってきました。

 

13年間にわたる「便秘と循環器系疾患との因果関係を調べた大規模調査」によれば、排便の頻度が1日1回以上の人に比べて、4日に1回以下の人では脳卒中が2.19倍高いという調査結果となりました。便秘(硬い便)が、血管性の病気を引き起こす大きな要因になることは確かなようです。

 

プレスリー

 

42歳の若さで、自宅のトイレで亡くなったエルビス・プレスリー(アメリカのロック・スター)の死因は、これまでは心臓発作(血管障害で突然死)とされてきましたが、「排便時の強いイキみによって血管が破れた」という医師の証言をアメリカの新聞が報じていました。

 

便秘によって便が硬くなるとイキんで排便しなければなりません。力いっぱいイキむと、瞬間の血圧が通常の120から280程度に跳ね上がるという報告もあります。そのような場合、動脈硬化で血管がもろくなっていると、急激な血圧上昇によって血管が破れ、心臓で起これば心臓発作、脳で起きれば脳出血ということになるのです。

 

他にも、喫煙者に多いCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の人が、強くイキむことで呼吸を止めると、動脈中の酸素が急激に減少して低酸素血症になることがあります。最悪の場合、死に至るという指摘もあります。

 

今回は、「理想的なウンチを作って、便秘を解消するアプローチ」「便秘をクスリで治すアプローチ」について投稿します。

 

じゃ~、柔らかい模範的なウンチはどうやって作ればいいの?

 

ウンチ作り方

 

ウンチの材料は、たっぷりと、ゆっくり投入せよ!

当たり前のことですが、腸内にある程度の便がないと便を押し出すことができず、排便が滞ります。ダイエットで炭水化物や油分を制限すると、便の滑らかさが失われ、硬くてパサパサした排出しにくい硬い便になります。

 

従って、「適正量の食事と水分」「水溶性の食物繊維」を摂り、よく噛むことで体に備わっている「消化のシステム」をフル活用することが重要です。

 

良いウンチを作るには、リラックスしてマシンを長く動かせ!

便は腸が波打つように動く「ぜん動運動」によって、腸内を移動し体外へと押し出されます。この動きは、交感神経と副交感神経という自律神経によってコントロールされており、特に副交感神経が優位になるとぜん動運動も活発になります。

 

従って、副交感神経が優位になる熟睡の時間を長く保ち、リラックスした環境下で腸を動かすと、翌朝に便が出やすくなるという訳です。

 

逆に、十分な睡眠時間が取れないと、腸を動かす時間が短くなり、ぜん動運動不足で便がうまく押し出せない環境を作ってしまうのです。一見関係のないように思える「睡眠」と「便秘」ですが、両方とも腸のぜん動運動と大きく関わっているのです。

 

 

ウンチを絞り出す仕組みを理解し、ノズルのセンサーに集中せよ!

肛門は、気体・固体・液体を区別できる極めて鋭敏な感覚器官です。もし、摘便(詰まっている便を、指でかき出す行為)や浣腸のノズルなどで肛門を傷つけてしまうと、そのセンサーが鈍くなり、便(固体)なのかオナラ(気体)なのか判断できなくなったり、便意を感じなくなる恐れがあります。外用剤(浣腸や座薬)を使う場合は上手に使って、肛門を傷つけないようにしましょう。

 

また、肛門には、便が漏れないように3段階のバリアー機能が働いているので、その仕組みをよく理解してスムーズな排便を導きましょう。

 

排便の仕組みですが、第一段階として、直腸壁の圧が高まると不随意筋(意識しては動かせない内肛門括約筋)が緩みます。そして、次の段階として、随意筋(意識して動かせる外肛門括約筋)の力だけで便を閉じ込めている状態に切り替わります。(大脳が発する便意を感じた状態)

 

次に、トイレに向かい、第三段階のバリアーである排便姿勢(直腸と肛門を一直線にする)を取り、息を止めて腹圧を高め、我慢していた随意筋(外肛門括約筋)を緩めて排便します。

 

排便姿勢

 

この時、前かがみの姿勢両足を着いていることが大切です。理想的な姿勢は、ロダンの「考える人」のような恰好で、この姿勢だと排便の3つ目のバリアである直腸肛門角が一直線に近づき、スムーズな排便が行われます。

 

排便姿勢を改善させることで、便の量が有意に増加したという報告もありますので、排便時には「考える人のポーズ」をとってください。

 

 

便秘をクスリで治すアプーローチも知っておこう

便秘の新しい薬については、前回投稿を参考にしてください。ここでは簡単に説明します。

 

便秘薬の代表格は、長らく、酸化マグネシウム(浸透圧性下剤)とセンナなどの刺激性下剤のほぼ2種類でしたが、2012年以降相次いで、ルビプロストン(商品名アミティーザ)リナクロチド(商品名リンゼス)エロビキシバット(商品名グーフィス)マクロゴール (商品名モビコール)という新薬が続々と承認・処方されるようになりました。

 

刺激性下剤のセンナなどは効果が早く出現し、排便後スッキリするということで根強い人気がありますが、長期に使用していると効果が薄れ『依存』と『耐性』をもたらすという欠点がありました。それに代わる複数の選択肢が広がったという点で朗報といえます。

 

ルビプロストンリナクロチドは、従来の酸化マグネシウムと同様、便を柔らかくする薬ですが、主に大腸に働く酸化マグネシウムと異なり、小腸での水分分泌を促進することで便秘を解消するという全く新しい種類の上皮機能変容薬です。

 

エロビキシバットは、なめらかな便を作るための胆汁酸を大腸に届くようにして便秘を改善するという、こちらも新しい種類の胆汁酸トランスポーター阻害薬です。

 

モビコールは、副作用がたいへん少ない薬で、粉薬を水に溶かして服用します。水以外にもオレンジジュースやリンゴジュース、味噌汁などに混ぜて飲むことができますので、特に小児の便秘(適応は2歳以上)に重宝します。

 

まとめ

「理想的なウンチを作って便秘を解消‼」をメインテーマに記事を並べましたが、便製造マシンである大腸側の問題によって、そう簡単に理想的なウンチは作れません。

 

なぜなら、いくら良い材料を腸に提供しても、大腸(マシン)の動きが器質的に低下していて便を肛門まで送りにくかったり、便意の低下(センサーの異常)で直腸部に便が滞ったりすると、どうしても便は硬くなってしまいます。

 

やはり、「理想的なウンチを作って便秘を解消するアプローチ」と「便秘薬で治すアプローチ」の両方が必要であると考えます。

 

昔から「浣腸は癖になるから使わない方がいい」と言われ、添付文書にも「常用すると効果が減弱し(いわゆる“なれ”が生じ)薬剤に頼りがちになります」と書いてあります。しかしながら、効果の減弱については科学的根拠に乏しく、使用を躊躇する必要は全くありません。

 

特に乳児期のお子さんは便秘薬の服用が難しいので、外用薬である浣腸がお勧めです。ただし、前述したように鋭敏なセンサーである肛門に傷をつけないように十分注意してください。

 

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