【今さら聞けない脂質異常症の診断基準】ここを押さえればもう大丈夫

覚える表臨床検査

血圧や血糖値の正常値は言えても、脂質の正常値は、ん~?

高血圧症や糖尿病に比べると認知度も危機感も低い「脂質異常症」ですが、狭心症や心筋梗塞のリスクを減らすため、コレステロールや中性脂肪をどのようにコントロールすればよいのか? 学者やお医者さんの間で様々な意見が出ているようです。

そのひとつに、「総コレステロールは高めのほうがよい」という研究成果が桜美林大学の柴田博教授(東京都小金井市の70歳の住民422人の追跡調査)から発表され、健康寿命を延ばすためには、ただコレステロールを下げれば良いということではないようです。もちろん、これは一次予防でのお話で、既に狭心症や心筋梗塞を経験した方については当てはまるものではありません。

そんなこんなで、2007年4月から病名や診断基準が変わりましたので、私なりに整理した内容を投稿いたします。前回、投稿した
「【脂質異常症の苦手意識を克服したい方!】これを読めば大丈夫かも?」
「【サラダ油の秘話発見?】皆さん!コレステロールゼロに騙されてるよ」
も参考にしていただければ幸いです。

ゲゲッ、「高脂血症」って言ったら時代遅れなの?

「高脂血症」って大変馴染みがあり、解りやすい表現でしたが、「LDL(悪玉)コレステロールと中性脂肪が高い状態は病的である」、一方で「LDL(善玉)コレステロールが低い状態も病的である」ということで、「高い」というくくりでは矛盾が生じることになりました。そのため、「高脂血症」改め、「脂質異常症」と呼ばれることになったそうです。患者さんにとってはどうでもいいような気がしますけどね。

難解で覚えにくい脂質異常症の診断基準

現在、日本医師会のホームページに掲載されている脂質異常症の診断基準は以下のとおりですが、耳慣れぬ言葉が見受けられますので少し説明させていただきます。

診断基準

冒頭の黄色下線について

この診断基準は「スクリーニングのためで薬物療法を開始する値ではない」としており、測定は「空腹時を原則とする」と書いてあります。会社等で実施される健康診断では、空腹時に限って採血することは困難でありまして、最初から正確な測定は期待できないということになります。

赤枠のFriedewald(フリードワルド)の計算式って?

この計算式は、いわゆる悪玉コレステロールを算出する式で、
LDL(悪玉)-C=TC(総コレステロール)-HDL(善玉)-C-TG(中性脂肪)×1/5 となっています。

式についての専門的な注釈は下記のとおりです。

難しい注釈

文章だけを読んでもサッパリ解らないと思いますので、前回投稿した図を使って簡単に説明しますね。

リポ蛋白表

簡単な図で説明

Friedewald(フリードワルド)の計算式が使える前提は、

1.血清中にカイロミクロンが存在しないこと(=空腹時ということ)
すなわち、外因性経路の①と②が存在してない状態です。

2..血清の中性脂肪(TG)のほとんどがVLDLに存在していて、その中性脂肪(TG)とコレステロールの比が
ほぼ5対1なっていること
すなわち、内因性経路には③と⑤が存在し、④がない状態です。
   また、③の乗客構成は、中性脂肪が5名、コレステロールが1名(5:1)の状態です。

3.Friedewaldの計算式に、(図の状態で)数値を代入すると
LDL(悪玉)-C=TC(総コレステロール)-HDL(善玉)-C-TG(中性脂肪)×1/5
2(答え)      7         4        1

TC(総コレステロール)=③1名+⑤2名+⑥4名=7名
HDL(善玉)-C⑥4名
TG(中性脂肪)×1/5=③5名×1/5=1名

となり、何となく、いい感じで辻褄は合っていますよね!(自信がないので、問答無用ということで)
ところが、食後や病気で中性脂肪が400mg/dL以上になり、
③の乗客の構成比が、中性脂肪10名、コレステロール 1名(10対1)に変化すると、
TG(中性脂肪)×1/5=③10名×1/5=2名となり、LDL(悪玉)-Cの答えは1名となり、
LDL(悪玉)-Cは低く計算されます

 だから中性脂肪が400mg/dLを超えた場合は、この式を使ってはダメ!と言っているのです。
実際には、中性脂肪が200mg/dLを超える当たりから誤差が大きくなるとのこと。

正確な測定を求めるなら、朝食を摂らずに朝一で検査するか、仕事の疲れがピークとなる午後5時頃に検査するかでしょうね。日本の会社事情では無理~。うちの職場では4時になったら、検査会社の人、帰っちゃいますから!

素朴な疑問。じゃ~、計算式など使わず、直接LDL(悪玉)-Cを測定すればいいじゃん!

実は、日本ではLDL(悪玉)-Cの直接測定法が、食事の影響を受けにくいことから多用されています。しかしながら、直接法の試薬は、図の④のIDL(レムナント)にも反応してしまい、IDLが増加するIII型の脂質異常症や糖尿病などで誤差が生じ、米国は測定精度を疑問視しているそうですただし、HDL(善玉)-Cの直接測定法については国際的にも信頼性が高く問題はありません。

緑枠のNon-HDL(善玉)-Cについて

LDL(悪玉)-C値の測定において、「直接法」と「フリードワルド計算式」とで生じる誤差の要因は、何といっても食事による中性脂肪(TG)値の上昇です。そのため、食直後においても、中性脂肪の上昇に影響を受けない検査方法が必要になり、2017年よりNon-HDL(善玉)-Cが検査項目に追加されました。

Non-HDL(善玉)-Cとは、文字通り、「善玉コレステロール以外のコレステロールということ」で、動脈硬化を促進するであろう脂質に含まれるコレステロールを測定しています。ターゲットとしているリポ蛋白は下図のとおりで、計算式は単純で、Non-HDL(善玉)-C=TC(総コレステロール)-HDL(善玉)-C です。
両因子とも空腹時や食後の影響を受けません

ノンHDH-c

海外では、スクリーニング検査として総コレステロールが使われていますが、日本人は、そもそもHDLコレステロールが高いので総コレステロールだけで判断すると過剰なスクリーニ ングになってしまいます。

そのため、総コレステロールからHDLコレステロールを減じたNon-HDL(善玉)-Cは、日本人向きの簡便な指標であり、かつ空腹時でも食後でも大きな値の差が出ません。前述したHDL(善玉)-Cの直接法測定は、国際的にも精度に疑義がなく、信頼性という点から問題がなさそうです。

「LDL(悪玉)-Cに30mg/dLを加えた値」ってどういうこと?

この表現は舌足らずで、正確にいうとNon-HDL(善玉)-Cの基準値は、LDL(悪玉)-Cの基準値(表)に30mg/dLを加えた基準値(表)を用いるという意味です。従って、具体的には下記のとおりです。

ノンHDL-cの基準

基準値の楽しい覚え方はこうだ!

LDL(悪玉)-Cは、140mg/dL以上   →→ 悪い 140(イシワ)

HDL(善玉)-Cは、 40mg/dL未満   →→ 良い  40(シワ)

トリグリセライドは、150mg/dL以上  →→    鳥(トリ)の150(インコ)

覚える表

まとめ

まとめ

ん~、今回はちょっチ難しかったかなぁ~。次回からは「脂質異常症治療薬を絵とゴロで楽しく覚える方法」に戻りますのでよろしくお願いしま~す。でも、ハァ~、ハァ~、少し休憩せねば。

 

くすりのレビュー、国家試験の勉強に役立つYouTube動画

yakulab info 下田武先生

脂質異常症を治療する意義:9分22秒

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