新春ドラマがスタート!でも、あり得ない設定に失望したのは私だけ?

新春ドラマ 臨床検査

昨年4月に放映された阿部寛さん主演のドラゴン桜。名場面がいくつもあって、今でも感動が蘇ります。そんな期待から、先日放映された同じく阿部さん主演の日曜劇場「DCU~手錠を持ったダイバー~」をさっそく拝見いたしました。

 

新春ドラマ

 

でも、「ん…、これから毎回観るのは無理~!」というのが私の感想です。そもそも水中事件を捜査する海上保安庁の新組織DCU(Deep Crime Unit=潜水特殊捜査隊)」という設定に無理があると思うのです。海保には、尖閣を守る重要なお仕事があり、陸(おか)に上がって聞き込み捜査をする余裕なんてあるはずがありませんからね!

 

そして翌日、浜辺美波さん主演の月9ドラマ「ドクターホワイト」も拝見しました。
これまた設定がぶっ飛んでおり、医師免許を持たない正体不明の女性(浜辺さん)が、並外れた医療知識をつぶやき、担当医の誤診を指摘するというストーリーです。

 

昔、「雲の階段」(渡辺淳一著)というヒット作がありまして、長谷川博己さん演じるニセ医者が、離島の事情から手術までやっちゃって医師法違反で逮捕されるストーリーでした。ところが、ドクターホワイトのように、ホンモノの医者の前で超マニアックな医療知識をつぶやくことは医師法違反には当たらないのでしょうね?思えば、AIだって医師免許がないのに専門医の判断を覆す訳ですから、これからの世の中を先取りしてるドラマなのかも?

 

まあ、このようなことを真顔で論じても仕方ないのでこの程度にしておきますが、「ドクターホワイト」の中でピロリ菌が度々登場していたので、今回はピロリ菌について投稿します。

 

本気でピロリ菌撲滅運動を行えば、日本人の平均寿命は確実に延びるのに…。残念!

ピロリ菌は、幼少時に胃の中に感染し、胃、十二指腸潰瘍の原因だけなく、胃がん発生の最大要因と言われています。予防環境の整った現代では感染者の人数はかなり低下していますが、それでも50~60歳代で約4割、80歳代で6割の人がピロリ菌に感染していると言われています。

 

ピロリ菌解説

 

コホート研究によれば、男に多い大量喫煙者が肺がんや心疾患に陥り、男女の平均寿命に差を与えています。喫煙については、ニコチン中毒によってなかなか止められない人も多いと思いますが、ピロリ菌の除去については、その簡単な方法を知れば、誰だって抵抗感が無いはずです。

 

もし、国策で(すべての検査と治療を保険適用で)ピロリ菌除去を推進すれば、日本人の平均寿命は疫学的に確実に伸びることが予想されます
にもかかわらず、現行の医療制度では「ピロリ菌に感染しているかどうか調べたい」「胃がん予防のためにピロリ菌検査を受けたい」ということで検査を求めても、保険適用にはなりません。

 

2013年2月22日から、ピロリ菌に対する検査や治療については、『慢性胃炎』という診断がつけば保険適用となりましたが、実際には、胃カメラで「胃炎の程度」や「胃潰瘍、十二指腸潰瘍の有無」を診断しなければならないので、胃カメラなしでの保険適用は難しいようです。胃カメラがネックとなり多くの人がピロリ菌検査にたどり着けない現状が透けて見えます

 

ピロリ菌に感染しているかはどうやって調べるの?

ピロリ菌の検査は、菌そのもの(菌体や抗原)、菌が体の中に入った免疫反応(抗体)、菌が持つ独特の酵素(ウレアーゼ)を調べる方法がありますが、下記のように「胃カメラが必要な場合」「胃カメラが不要な場合」に分かれます。

※自治体によって、下記検査をスクリーニング検査で用いたり、補助金を出している場合がありますので担当部署に問い合わせてください。

 

ピロリ菌検出検査

 

【胃カメラを使う方法】(症状がある場合)

迅速ウレアーゼ試験

胃カメラで二か所程度、細胞を採取して試薬に付けます。ピロリ菌が持っている酵素(ウレアーゼ)が試薬に反応すればピンク色に、反応しなければ(いなければ)黄色になります。欠点としては、胃カメラでピロリ菌のいない場所を採取した場合、誤判定になってしまいます。

組織鏡検法培養法

ピロリ菌を顕微鏡で探したり、採取した組織からピロリ菌を培養して判定しますが、一般の医療機関ではあまり実施されません。

 

【胃カメラを使わない方法】(症状がない場合)

尿素呼気テスト(UBTテスト)

診断薬を服用し、服用前後の呼気を専用の紙パックに集めて診断する検査です。簡単な割には精度の高い主流の検査となっており、除菌後の判定検査自費検査で用いられます。
自費検査の場合、検査だけで10,000円程度を要します。

 

抗体検査(血液)

ピロリ菌に感染すると免疫が反応して菌に対する抗体をつくります。血液中に存在する抗体の有無を調べる方法ですが、過去にピロリ菌に感染していると陽性反応になります。従って、除菌後の判定検査には用いません。

 

ABC検診

血液検査で行う「胃がんのリスク検診」で、具体的には、ピロリ菌感染の有無 (ピロリ菌IgG抗体)と胃粘膜萎縮の程度(ペプシノゲン値)を測定し、胃がんになりやすい状態かどうかをA~Dの4群に分類します。ピロリ菌感染が判明すれば、保険適用で除菌できますが、胃カメラを受けていることが条件になります。

 

便抗原検査

糞便中のピロリ菌の抗原の有無を調べる方法です。自治体によってはスクリーニング検査に用いています。

 

まとめ

ピロリ菌と胃がんとの相関性は極めて高く、ピロリ菌の撲滅によって日本人の平均寿命は確実に上がるはずです。しかしながら、胃カメラへの抵抗感保険適用の複雑さで、ピロリ菌検査が広く浸透していないように思います。

 

※ピロリ菌検査に胃カメラが不可欠であるという専門医
 私たち専門医は胃の画像を見ただけで、ピロリ菌がいそうな胃か?いない胃か?をほぼ判断できます。ピロリ菌が住めない程に荒れた胃(腸上皮化生といって胃粘膜が腸粘膜に置き換わる)ではピロリ菌陰性となってしまいますし、胃カメラを呑めば既に胃がんになっているかどうかも分かります。従って、胃カメラなしのピロリ菌検査はナンセンスで意味がありません。

わかりました先生!

ところで、おじいちゃん、おばあちゃん! 孫にピロリ菌を移したらエライことです。息子や嫁さんに怒られますよっ!
検査をしてない方は、是非検査をしてくださ~い。

ピロリ菌の除菌方法(服薬)については次回投稿します。

 

 

くすりのレビュー、国家試験の勉強に役立つYouTube動画

yakulab info 下田武先生

ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌療法:10分27秒

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