相互作用がヤタラ多い抗真菌薬。「塗る」と「飲む」とで大違い、何で?

抗真菌サムネイル① 感染免疫

前回の水虫治療薬に続き、服用する抗真菌薬の投稿となります。
真菌による感染症で最も身近で頻度が高いのは水虫です。水虫いんきんたむしは、感染する場所が体表であるためるため「表在性真菌症」とも呼ばれます。

 

前回投稿のとおり、表在性真菌症についてはかろうじて「コッソリさんの塗り薬」で対応できますが、真菌が、肺・肝臓・腎臓・脳などの深部に入り込んで感染する「深在性真菌症」となると抗真菌薬を飲み薬として服用しなければなりません。

 

主に骨髄移植や臓器移植を受けた際にステロイド薬や免疫抑制薬を投与され、免疫力が低下した患者さんに起こることがあり、診断が遅れると治療が困難で重篤な事態に陥ります。

 

抗真菌薬の服用に際しては、代謝やクスリの相互作用より悪影響が出やすいため,処方前の併用薬チェック副作用チェックが重要となります。これが「水虫薬の市販薬には飲み薬がない‼」理由の一つになっています。

 

ではなぜ、抗真菌薬の飲み薬が問題か?というと、真菌が見かけによらず高度な生命体で私たちヒトの細胞にたいへん似かよっているからです。そのため、抗がん剤同様、ヒトの細胞を傷つけずに真菌だけを攻撃するには「毒とクスリ」の境界線が狭くなってしまうのです。

 

抗真菌サムネイル①

 

じゃ~、細菌と真菌はどこがどう違うの?

すべての生物は細胞からできていて、構成する細胞の特徴によって、細菌、真菌、動物、植物などに分類されています。
細菌も真菌も「菌」がつくので同じ仲間だと思われがちですが、細胞の構造が大きく異なり、薬剤が攻撃するターゲットは細菌と真菌とで異なってきます。

真菌細胞とヒトの細胞

 

細菌は、染色体DNAが細胞の中に裸で存在しているので「原核生物」に分類されますが、真菌(カビ、酵母、キノコの仲間)は、染色体が膜に包まれた核の中に存在しているので、ヒトと同じ「真核生物」の仲間となります。
また、真菌は、核の他にミトコンドリアや小胞体などたくさんの小器官をもっていて、実のところ細菌に比べて格段に高等な生命体なのです。

 

真菌とヒトの違いは「細胞壁の有無」と「細胞膜の構成成分」だ‼

真菌の細胞構造が、細菌よりも高度でヒトに近いことは分りましたが、そうなると真菌をやっつけるには、トの細胞と異なる場所を探し出して、ピンポイントで攻撃しなければなりません。

 

真菌とヒトの細胞の相違点は以下のとおり二点あります。
①ヒトには細胞壁がないが、真菌には細胞壁がある
②ヒトの細胞膜の構成成分はコレステロールだが、真菌の構成成分はエルゴステロールである
こうしたことから、抗真菌薬は下図のように大きく4つに分類されます。

 

 

サムネイル(作用機序)

 

一覧

 

①ポリエン系薬(アムホテリシンB)
抗真菌薬の歴史はアムホテリシンBから始まりました。抗真菌スペクトラムが広く、効果が強く、耐性菌がほとんど出ないという三拍子揃った薬ですが副作用が強いため、現在の第一選択薬はアゾール系薬となっています。
しかし、アムホテリシンBにしか感受性を持たない真菌の治療や、重症の真菌症の場合には頼りになるクスリです。

 

②アゾール系薬(~コナゾール)
アゾール系薬は、真菌治療の主力で、アムホテリシンBと比較して副作用の面で大きく改善されました。
しかし、チトクロームP450酵素による肝代謝を受けるため、同じ経路で代謝される併用薬の影響を強く受けます。このため併用禁忌または注意の薬剤が多いという問題があります。現在、第4世代まで開発され、世代が進むたびに改善された使いやすいクスリが登場しています。

 

③キャンディン系薬(~ファンギン)
キャンディン系薬は、ヒトの細胞にはない真菌壁の1,3-β-Dグルカンを阻害して効果を表すため、ポリエン系やアゾール系と比較して更に副作用は少なくなります。ただし、抗真菌スペクトラムは狭くなり、クリプコックスやムーコルには効果がありませんが、真菌症の大多数を占めるカンジダとアスペルギルスに比較的安全に使用できるクスリとして価値があります。

 

④フルオロピリジン系(フルシトシン)
フルシトシンは、具体的にはアムホテリシンBと併用され、単独では使用されません。重度のカンジダ 感染症やクリプトコッカス症の治療に用いられます。

 

絵とゴロで楽しく覚える真菌薬の名前はこれだ‼

概要図

サムネイル②

 

爪水虫に使われるクスリを追加で覚えよう‼

上記の4系統以外に、細胞膜にあるスクアレンエポキシダーゼを阻害して、エルゴステロールの生成を阻むクスリがあります。最終目的はアゾール系薬と同じ(エルゴステロールの生成阻止)なので、②の亜流として覚えてください。

 

テルビナフィン(ラミシールⓇ)やブテナフィンは、イミダゾール骨格を持たないアリルアミン系の抗真菌で「爪白癬治療薬」として用いられます。外用薬でも内服薬でも重宝されています。

 

 

サムネイル②

 

 

 

 

くすりのレビュー、国家試験の勉強に役立つYouTube動画

yakulab info 下田武先生
爪白癬治療薬のまとめ:14分06秒

抗真菌薬(アゾール系、キャンディン系抗真菌薬など):16分37秒

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