ステロイドの薬効ってムチャ多いけど、体内でどのように働いているの?

ストロング② 皮膚科

前回前々回よりステロイド外用薬の楽しい覚え方について投稿しています。

副腎皮質ホルモンは、糖代謝、脂質代謝、蛋白代謝、水・電解質代謝、骨・カルシウム代謝、免疫抑制作用、抗炎症作用などの働きに深く関わり、生命維持には欠かせないホルモンです。ところが、(1935年ウシの副腎皮質からステロイドを抽出して以来)85年以上も研究されているのに、未だ多くのメカニズムが解明されていないそうです。

 

それなのに、ステロイド製剤は「重症時に使用する切り札」「副作用の強いヤバイ薬」といったイメージを持ちつつ、多くの臨床の現場で幅広く使用されています。確かに、昔から使われているアセトアミノフェンも作用機序が分からないまま世界中で使われていますが、そのヤバさの度合いは次元が違うと思います。

ちょっと心配になったので、参考書を片手にステロイド君の正体を整理しました。

 

黒板①

 

◎ステロイド製剤の正体とは
副腎皮質からは、糖質代謝に関わる糖質コルチコイドと、電解質代謝に関わる鉱質コルチコイド、加えて少量の男性ホルモン(テストステロン)が分泌され、これらはステロイド骨格を有しています。

その中で、糖質コルチコイドが「副腎皮質ステロイド」と呼ばれ、抗炎症作用と免疫抑制作用をもっています。糖質コルチコイドを化学合成したものが「合成ステロイド製剤」で、本来もっている弱い血圧上昇作用(血管収縮作用)を除いて合成されています。

 

黒板②

 

◎抗炎症作用の正体とは
ステロイド製剤は、分子量が300~500前後と小さいため拡散して細胞内に入ります。細胞質内にはステロイドと特異的に結合する受容体が浮遊(イメージ)しており、ステロイドと結合した受容体は活性化されて細胞の核内に入って行きます。

これが引き金となり、核内では蛋白質を作るためのmRNAが増加したり、転写を促進するメカニズムが働き、抗炎症蛋白をはじめ多くの生理作用を有する蛋白質が作られ、細胞外に放出されます。これが、抗炎症作用の正体です。

 

◎免疫抑制作用の正体とは
細胞膜にある炎症性サイトカインの受容体に、サイトカインが結合すると、AP-1やNF-κBというような転写を促進する因子が活性化され、核内ではサイトカインを作るための転写機能が高まります。大量にサイトカインが産生されるとサイトカインストームが発生し、過剰な免疫が働くことになります。

ステロイドと結合した受容体は、サイトカインの転写因子であるAP-1やNF-κBの働きを阻害し、サイトカインの転写を抑制することで、サイトカインの大量生産を抑えます。これが、免疫抑制や抗アレルギー作用の正体です。

但し、この二つの考え方はあくまでも仮説で実証されたものではないそうです。また、ステロイド製剤とは別の作用機序を有するプロトピック軟膏(免疫抑制剤)コレクチム軟膏(ヤヌスキナーゼ阻害薬)については、別の機会に投稿します。

 

今回覚える表はこれだ!

ストロング一覧表

現在、ドラッグストアなどで購入できる市販のステロイド外用薬(OTC医薬品)は、青字で示した、弱いほうから3ランク(「弱い(weak)」「普通(medium)」「強い(strong)」)に属するものに限られています。

リンデロンVとリンデロンDPはランクが違うので注意が必要ですが、それぞれの濃度が0.12%、0.064%と、微妙な匙加減になっています。何らかの重要な意味があるのでしょうが、私には分かりません。

 

「ストロング(強い)」の楽しい覚え方

ストロング①

「三反園君」?など、関係のない人を引っ張りだすなんて、何か無理があるなぁ~。疲れでしょうか?次のマイルド(ミディアム)シリーズは、もっと険しい道のりになるんだろうな。(憂鬱)

 

ストロング②

吉草酸は、不快な臭いのするカルボン酸の一種で、この異性体であるイソ吉草酸が「足の裏のアノにおい」の原因とされています。イソ吉草酸は、人体から分泌される物質ではなく、皮膚の上に存在している「皮膚常在菌」が生み出す物質です。足を清潔にしていれば臭わないということですね。

 

くすりのレビュー、国家試験の勉強に役立つYouTube動画

yakulab info 下田武先生
ステロイド外用剤の適正使用:21分15秒

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