「アデュカヌマブ」は、日本のエーザイとアメリカのバイオジェン社が共同開発したモノクロナール抗体製剤(注射薬)です。2021年6月7日、FDA(アメリカ食品医薬品局)が、同薬の製造販売を承認したことから、両社の株価は大きく跳ね上がりました。
ところが、その後、アメリカの大手病院が薬の使用を見送ったことから株価が大きく値下がりし、この新薬がかかえる不安定な要素が露呈したのでした。いずれにしても、世界中の人が注目している薬なので、この際、最低限の知識を習得しようと思い投稿しました。
まずは、クスリの名前を楽しく覚えましょう!
舌を噛みそうな薬品名です。商品名は、未だ決定ではないので覚えなくていいかも?
「アミロイドβ仮説」って?
アルツハイマーの原因としては、「アミロイドβ仮説」というものがあります。通常、脳の神経細胞膜にあるアミロイドβタンパクは、血液中に放出されて分解・代謝されるのですが、脳の中に溜まってしまうと、神経細胞の働きが阻害されてしまいます。神経細胞の働きが悪くなるとアセチルコリンが減少したり、過剰なCa2+の流入によって多くの神経細胞が死滅し、最終的には脳が萎縮してしまいます。これが「アミロイドβ仮説」です。
アデュカヌマブは、「アミロイドβ仮説」に基づき、アミロイドβタンパクをモノクローナル抗体で排除することを作用機序としていますので、もしこの仮説が根本的に間違っていたら、新薬の存在意義は無くなってしまうのです。現に、アミロイドβタンパクを減らす薬は、過去多く開発されましたが、製造販売の承認に十分なエビデンスを提示できなかった経緯があります。
じゃ~何でアデュカヌマブだけが承認されたの?
アデュカヌマブは、これまで治験の最終段階で却下されていましたが、対象者や評価法を改良した結果、ようやく承認に漕ぎつけたという印象です。簡単に言うと、「効果なし」の判定グループと真逆の「効果あり」の判定グループが出ていましたが、両グループを足して分母を広げた結果、全体としては「効果あり」になったと言われています。
また、アミロイドPET検査によって、本来は増加し続ける脳内の沈着アミロイドを、減少させることができたというエビデンスを示せたことが評価されたようです。結果、FDA は、エビデンスを突き付けられ、それほど強い副作用もないことから、(仕方なく) 承認せざるを得なかったとか?
また、今回の臨床試験はアルツハイマーの患者を対象にしたものではなく、「アルツハイマーの初期段階」や「軽度認知障害(MCI)」の人を対象に行った治験であったことが有利なポイントになったようです。
過去、神経細胞にダメージを受けている人を含めた治験は全て失敗していましたが、アデュカヌマブは、神経細胞がまだ元気なうちにアミロイドβを取り除くということで、死にかけたダメージのある神経細胞は相手にしていないのです。 (えっ~、これって真の根本治療薬になれるの?)
こうしたことから、「根本的治療薬」を名乗るには「あまりにも効果が弱いのではないか?」という意見が専門家から相次ぎ、承認後の9年間、2030年までは新たな臨床試験を行い、再現性があるかどうかを確認すべしという条件が付与されたのです。 (ん~、納得、納得。)
じゃ~具体的にはどんな治療でいくらかかるの?
まずは患者の選別です。具体的な診断基準は分かりませんが、アミロイドPET検査(保険適用外で1回当たり20~30万円)によって、「アルツハイマーの初期段階」と「軽度認知障害(MCI)」の人だけを選び出します。重度の人はここでお引き取り願います。 (これって、トリアージ?)
選ばれし御人は、1年6カ月(臨床試験と同じ)に渡り、アデュカヌマブの点滴を月1回受けることになり、その効果は48か月(4年間)持続するそうです。バイオジェン社の概算費用によると年間5,600ドル(約610万円)ということで、最低でも月額50万円程度の治療費が必要になります。日本で保険適用になれば、高額療養費制度により月数万円の負担で済むことになりますが…。
しかしながら、日本には約500万人いると言われている認知症患者に対して、安易に保険適用を認めてしまうと健康保険制度が破綻する恐れがあります。アメリカは、民間保険なので、いくら高くてもそれを提供している保険商品を選べばよい話であって、自己負担、自己責任の名において治療が受けられます。
(じゃ~、日本国民はドゲンしたらよかとね⁉)
個人的な意見ですが、ハテナマークが多すぎるアデュカヌマブを安易に承認したり保険適用にすることは避けていただきたいと思います。
じゃ~、もっと安い方法はないの?
少なくとも、高額なアミロイドPET検査に代わるものは登場しています。ノーベル賞受賞者の田中先生が在籍する島津製作所は、脳内アミロイドβの異常蓄積を血液検査で高精度に捉える方法を開発しました。安全な血液検査だけで、低コストでアミロイドβの蓄積が確認できるそうで、今後、「アミロイドβ仮説」の検証やアルツハイマー病の新薬開発に役立つものと期待されています。
(よっぽどこっちの発明がすごくねぇ~?)
アデュカヌマブ(モノクロナール抗体)は、アルツハイマーになりにくい人の血清から情報を集め、体外のラボで高度な技術を用いて製造するため、値段が高いのは当たり前です。
一方、コロナワクチンのようにmRNAを体の中で入れて、我が身の細胞で特殊な蛋白質を作らせるのであれば、モノクロナール抗体に比べ、格段に安くつきます。理論上は、アミロイドβを攻撃できる抗体や酵素を体内細胞に作ってもらえばよいのですから、何となくできそうじゃないですか?皆さん、ご一緒に考えましょうよっ!
次回はこの続きを投稿します。(小声で) いや、しようと思いますが、出来ないかも知れません。
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