「曖気、呑酸、おくび、嘔気、癪」堂々と説明できる人!アナタは偉い

愁訴 消化器科

前回は「腹痛の相談」について投稿しましたが、今回は「胃薬」のお話しです。

 

現代人にとって胃の不調は身近な悩みなので、その症状を訴える言葉は多種多様で難解なものもあれば、ご当地ならではの方言もあります。また、キリキリ痛むとかシクシク痛むといった主観的な訴えもあって、それらを聞いて的確なクスリを勧めることはかなり難しいと思います。

 

あくまでも一つの事例ですが、多種多様な訴えを六つのパターンに分類し、それに見合う市販薬を下記のとおり勧めています。「即病院へ」の案内は前回投稿を参考にしてください。

 

愁訴

 

市販薬

 

市販薬の「効能効果」は、これでもか!と言わんばかりに多くの症状が書いてあり、そのためか、まるで散弾銃でマトを狙うかのように幅広い成分が配合されています。どれかが当たれば(効けば)ラッキーというような処方となり、成分量についても効くのか?効かないのか?微妙な量になっています。

 

市販薬の効能

 

例えば、「キャベジンコーワα」ロートエキス量は、3倍散90.0mgとなっており、ロートエキスの量としては30.0mgとなります。他にもロートエキスを含む胃腸薬はたくさんありますが、キャベジン同様、30.0mgに留まっています。

 

この分量では「鎮痙成分」「止瀉成分」と表記できないようで、「制酸成分」とか「抗コリン作用成分」などと微妙な表記になっています。従って、効能は「胃酸の分泌を抑えて痛みは和らぎますが、痙攣性の痛みには効きにくくなっています。」と説明しなければなりません。

 

もし、胃がキリキリ痛み、鎮痛鎮痙効果のあるクスリを求められたら、ブスコパンA錠(抗コリン薬のブチルスコポラミン臭化物)もしくはサクロンQ(局所麻酔薬のオキセサゼイン)を勧めることになります。

 

それにしても、抗コリン作用があるロートエキスって、緑内障や前立腺肥大、妊婦や授乳中の人に注意を促さなければならないのに、何でこんな中途半端な量を多くのクスリに配合するのでしょうか? 総合胃腸薬って、「帯に短し、タスキにも短し⁉」ってことで、本当に効くのでしょうかね?

 

個人的には、やたら成分数が多い市販薬より、太田胃散のように比較的マトを絞ったライフル銃のような薬を買うようにしています。「太田胃散、い(胃)~クスリです。」という昔のコマーシャルが懐かしいです。

 

胃腸がどんな状態かを想像してクスリを選ばなきゃ

胃腸薬の働きを理解するには、自分の胃や腸の動きがどのような状態にあるかをイメージすることが大切です。

 

下記の表は、胃腸の状態症状から治療薬を分類したものです。

表

別の機会

 

特に2番のように、胃の運動が低下して、胃もたれ食欲不振がある場合、ガスター系の薬や胃粘膜保護薬(テプレノンやレバミピド)を服用してもあまり意味がありません。それなのに、その手の市販薬を強く勧められたり、かかりつけの先生から、とりあえず的に処方されるってアルアルですよね。

 

「攻撃が最大の防御」なら、「防御は最小の攻撃」ってこと? はぁ~?

今回は、「攻撃因子を抑制するクスリ」と「防御因子を増強するクスリ」について考えてみました。

防御因子攻撃因子

 

消化性潰瘍治療薬は、攻撃因子(胃酸、ペプシン、ガストリン、ピロリ菌、NSAIDs、ストレスなど)を抑制するクスリと、防御因子(胃粘膜、胃粘液、プロスタグラジンなど)を増強するクスリで成り立っています。

 

 

防御と攻撃

 

上の図を眺めていると、「攻撃因子を阻止するクスリ(紺色字)派手な主役で、胃粘膜保護薬やプロスタグランジン製剤のような「防御因子を増強するクスリ(灰色字)地味な脇役という感じです。

 

特にレバミピド(ムコスタ)とテプレノン(セルベックス)って、解熱鎮痛剤(NSAIDs)のオマケのようについてくる「ミスター脇役」という印象がありますが、両者の違いを深堀りしてみました。

 

レバミピド(ムコスタ)とテプレノン(セルベックス)って、どこがどう違うの?

クスリの楽しい覚え方は下記のとおりです。


ムコスタ

 

2つの薬は共に防御因子を増強するクスリで、胃粘液の産生を促すことで、胃酸からの胃粘膜を守る働きがあります。また、プロスタグランジンE2、L2を増加させることで胃粘液の分泌を促進させる作用があります。

 

痛み止め(NSAIDs)は、プロスタグランジンの産生を阻害して痛みをとってくれますが、同時に胃の血流を抑えて胃を荒らしてしまいます。よって、局所的にプロスタグランジンを増やして胃粘液を出してくれるレバミピド、テプレノンを服用することは理にかなっています。

 

両者の効き目はほぼ同じとされていますが、特徴として、「レバミピドは食事の影響を受けないのに対し、「テプレノンは食事の影響を受け易い」とされています。その理由は、テプレノンが脂溶性のため、胃の中に食べ物があった方が吸収され易いとされています。

 

従って、ロキソニンなどの痛み止めを頓服で服用する場合は、食事の影響を受けにくいレバミピドの方が使いやすいと言えます。また、現在、テプレノンを含んだ市販薬(セルベール整胃錠など)はありますが、レバミピドは処方薬だけに提供されています。

 

 

 

くすりのレビュー、国家試験の勉強に役立つYouTube動画

yakulab info 下田武先生

セルベックス(テプレノン)、ムコスタ(レバミピド)の特徴:8分04秒

コメント