鎮痛薬を使用するには、「痛みの種類」や「痛みの程度」に応じて適切な鎮痛薬を用いなければなりません。「痛みの経路」は、おおまかに3つに分類されます。図を参照し、「人の痛みが分かる人」になりましょう。
痛みは3つの経路から到来し、逆に、痛みを追い返す経路もあるんだね
①心因性疼痛(心理・社会的な要因による痛み):
眼に見える傷や炎症などはありませんが、社会生活で受けるストレスや、時にはガンへの不安などから起こる痛みです。体の様々な部位に多くのオピオイド受容体(μ、δ、Κ受容体)が存在しますが、特に、μ受容体の抑制が効果的で、最も痛みを感じにくくしてくれます。
②侵害受容性疼痛(炎症や刺激による痛み):
ケガや火傷による痛みで、損傷を受けた組織に炎症が起こり、痛みを引き起こす物質が発生します。そして、その物質が、末梢神経にある「侵害受容器」という部分を刺激することで痛みを感じるのです。「体に起きた危険を脳に伝える大切なシステム」であり、上行性疼痛伝導路を介して、脳に痛みを伝えます。
「体性痛」と言われる皮膚や関節の痛みは、痛い場所を他人に教えることができますが、内蔵の閉塞や圧迫からくる「内臓痛」は、自分でもどこが痛んでいるのか分からないことが多いと思います。
③神経障害性疼痛(神経が障害されることで起こる痛み):
何らかの原因により神経が障害されることで起こる痛みとされていますが、一説には、カルシウムイオンの過剰な通過性が原因で発現する痛みであるとされています。
もし、神経が損傷(遮断)されれば、電線と同じで、痛みは伝わらないはずですよね。事例として、帯状疱疹が治った後の長引く痛み、 糖尿病の合併症に伴う痛みやしびれ、坐骨神経痛、脳卒中や脊髄損傷による痛みなどが挙げられます。
「神経が障害される痛み?」という言葉に違和感を感じるのは私だけではないと思うのですが…。
下降性疼痛抑制系は、「痛みを追い返す経路」なんですね。
人間社会の「上意下達(じょうい・げだつ)」は、体の中にも存在するんですね。まさに、下降性疼痛抑制系は、最上位者である「脳の意志・命令」を、下位者である「抹消の侵害受容器」に伝え、「痛みの訴え」を退けてしまうシステムです。
脳が「痛みで興奮している受容体」をキャッチすると、セロトニン神経とノルアドレナリン神経にセロトニンやノルアドレナリンを放出させ、過剰な痛みの伝達に抑制をかけることが知られています。
従って、セロトニン、ノルアドレナリンがあまり分泌されない人は、この作用がうまく働かず、過剰に痛みを感じてしまうのです。慢性的な痛みを訴えたり、過度に痛がる人の中にはこの機能がうまく働いていない方が存在すると思われます。
また、うつ病の方は、セロトニンとノルアドレナリンの受け渡しが不足して情報伝達がうまく処理できず、長引く痛みを訴える方がいるとも言われています。
SNRIや三環系抗うつ薬の薬理作用を考えれば、当然、下降性疼痛抑制系の経路を賦活化させる訳で、従来からうつ病で使われていた薬が痛みにも効くことは納得できると思います。
今回の投稿で覚えるクスリはこれ
鎮痛薬はムチャクチャ多く存在しますので、絵とゴロで覚えるクスリは下記の表のみとし、絵とゴロは次回投稿します。
くすりのレビュー、国家試験の勉強に役立つYouTube動画
yakulab info 下田武先生
痛みの種類と鎮痛薬の使い分け:24分47秒
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