便秘の「秘」は、人に言えない「便の秘密」から来た?そんなバカな⁉

便秘 消化器科

書初めで「便秘」という漢字を書いた記憶はありませんが、なぜ「」という漢字を用いるのでしょうか?

医学用語なら「便と書いた方が自然な感じで、「泌」には「狭い隙間から水がしみ出る」という意味があるので、「便が狭い腸で締め付けられて水がしみ出た状態」などと適当な説明が思いつくのですが?

 

便秘

「便秘(ベンピ)」は英語で「constipation(コンスティぺーション)」と訳されて両者が絡むものはありませんが、中国語では「便秘(ベンピ)」=「便秘(ビィエミイ)」と訳されて、発音は異なるものの同じ漢字を用います。当然、紙に書けば中国人には通じることとなります。

 

現存する日本最古の医書『医心方』(平安時代)では、便秘の症状を「大便不通」「大便難」と表現されていましたが,その後、日本で刊行された最初の西洋内科の翻訳書『西説内科撰要』(江戸時代)では、便秘の症状を「大便秘結」と記されています。

 

ということは、平安時代以降、中国医学の流れによって便秘の症状が「大便秘結(だいべんひけつ)」と呼ばれるようになり、その長ったらしい名称が略され「便秘(べんぴ)」となったようです。

 

中国医学において秘結(ひけつ)とは、「便が水分を失い、固まってしまう状態」を意味し、その原因を熱秘・気秘・虚秘・冷秘の4つのタイプに分類しています。つまり、「便秘」の「秘」の漢字は、これら4つの分類名の語尾に由来しているということになります。

 

便秘タイプ

 

マニアックなことを長々と説明しましたが、便秘男子のコダワリとして整理させていただきました。「withコロナ」は数年もすれば記憶の片隅に追いやられると思いますが、私にとって「with便秘」は一生続き、死ぬまで悩まされることになります。そんな訳で、私にとって「便秘」の「秘」とは、やはり「人に言えない便の秘密」なのです。

 

じゃ~、便秘症と下痢症に悩む人って、どんな具合になってるの?

「同病(どうびょう)相(あい)憐(あわ)れむ」と申しますが、同じ腸の病気なのに、便秘と下痢はその症状が真逆過ぎてお互いの苦しみを理解し得ないような気がします。

 

令和元年の国民生活基礎調査によれば、最も気になる症状(複数回答可)を訴えた人37,471千人のうち、「便秘」と答えた人は648千人、「下痢」と答えた人は396千人で、下痢症の人よりも便秘症の人が1.6倍多いことが分かりました。

 

 

便秘と下痢対比

 

性差に関しては、下痢症の人は比較的男性に多く便秘症の人は50歳代までは圧倒的に女性が多くなっています。また、便秘になる人は、60 歳以降は男女とも年齢とともに増加し、80 歳以上では男女差が無くなって行きます。

 

高齢による便秘の原因は、若い頃に比べて食事の量が減り便の量が少なくなる。 加齢によって腸の働きが低下して排便に必要な腹筋や肛門括約筋が弱くなり、大便が腸にとどまる時間が長くなる。また、加齢とともに大腸の長さが長くなるなどが挙げられます。

 

男性に下痢が多く、女性には便秘が多い。原因が解明されたってホント?

2020年12月、岐阜大学 応用生物科学部 獣医生理学研究室 志水泰武教授らのグループは、ラットの大腸に痛み(刺激)を与えた場合、オスでは排便が誘発されるが、メスでは誘発されないという論文を発表しました。

 

この研究により、男性には下痢が多く、女性には便秘が多いという排便異常の性差の原因が示唆されたとともに、過敏性腸症候群などの病態解明につながる糸口が見つかったとして期待が高まっています。

オスメス性差

 

 

 

 

前回投稿で痛みは3つの経路から到来し、逆に、痛みを追い返す経路(下行性疼痛抑制経路)があることを説明しました。脳が「痛みで興奮している受容体」をキャッチすると、セロトニン神経とノルアドレナリン神経にセロトニンやノルアドレナリンを放出させ、過剰な痛みの伝達に抑制をかけることが知られています。

 

今回の論文によれば、下行性疼痛抑制経路を通して供給される神経伝達物質の成分がオスとメスで異なることが報告され、オスでは、ドパミンやセロトニンが活性化され、脊髄の排便中枢を刺激して大腸の運動を促進することが報告されました。

 

一方、メスでは、ドパミンは活性化されず、セロトニンとGABAが活性化されることが報告されましたが、GABAには排便中枢を抑制する作用があるため、セロトニンの大腸運動促進を打ち消してしまいます。結果、メスは便意を催さないという報告になっています。

 

ジェンダー平等の時代に不謹慎かも知れませんが、昔は「男は度胸、女は愛嬌」と言われ、物怖じしない強い男が理想とされていました。物怖じしない強い男には恐怖もストレスも無縁のようですが、弱い男は緊張でゲリッピーになってしまい、「女の腐ったの」などとヒドイ言葉でからかわれました。
時代は随分変わりましたが、男子の下痢症は現代病なのでしょうか? 草食系男子が増えたせいなのでしょうか?

 

 

くすりのレビュー、国家試験の勉強に役立つYouTube動画

yakulab info 下田武先生
瀉下薬、止瀉薬①(瀉下薬):14分03秒

瀉下薬、止瀉薬②(止瀉薬):8分45秒

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