「変化できる者が強い⁉」な~んてダーウィンは言っていないってサ!

サムネイル入社式 ちょっと休憩

今回は「ダーウィンの進化論」についてです。
「唯一生き残ることができるのは、変化できる者だ‼」「本当に強いのは変化に順応できるヤツだ‼」などと、ダーウィンが言ったとされるこれらの言葉は、自己啓発セミナーや社長訓示などでよく使われ、誰もが知るセリフとなりました。

 

ところが、進化論に照らしてみれば、ダーウィンはそんなことは言っていないのです。これらの言葉はある意味正しいので誰からも指摘されず、今後も多くの挨拶や訓示の場で多用されると思われますが…。

 

サムネイル入社式

 

進化に必要なのは「より多くの子孫を残し、偶然の突然変異をより多く得ること」

ダーウィンの「自然淘汰説」は、偶然の突然変異によって親と異なる形質の子が生まれ、その遺伝子を受け継いだ子孫が淘汰されることなく生存し続けることが「進化」だと言っているのです。

 

つまり、努力して変化(進化)できる訳でなく、本質的には、偶然の突然変異を待たなければ変化(進化)できないということです。また、その変化(進化)が自然界に適合できるかどうかは自然淘汰に委ねられ、何とも気の長~いお話なのです。

 

また、後にダーウィンは、生物が進化する上で「生存するには不利な形態」でも「繁殖するのには有利な形態」があることに気づき、「繁殖能力」に着目した「性淘汰説」という理論を発表しました。

 

細菌やウイルスのような無性生殖なら恋愛など関係なく黙々と分裂を続けて子孫を作れるのですが、有性生殖はそう簡単ではありません。「恋愛」とか「求愛」という複雑で大きなパワーを要するアクションが必要となり、それができないオスは淘汰されてしまいます。オスはとにかくメスにモテなければ繁殖の機会を与えられないのです。

 

サムネイルシャモクバエ

 

 

同じ時代を生き抜いた皇帝と将軍、ヒトの進化に影響を与えたのはどっち?

皇帝と将軍

 

皇帝ナポレオンは、たぐいまれな「環境適応力と生存能力」によって、僅か20年の間に一介の将校から皇帝にまで昇りつめました。しかしながら、多くの子には恵まれず、その繁栄は長く続きませんでした。

 

「トンビが鷹を産む」が如く、突然、どんなに優秀な遺伝子を獲得しても、遺伝的にはその才能が次の世代に受け継がれる保証はありませんが、後継者(子)を作ることができなければ、そこで全て(進化)が途絶えてしまうのです。

 

一方、江戸の最盛期に君臨した11代将軍、徳川家斉(いえなり)は、『歴代将軍で最も好色だった』といわれ、作った子供はナント53人もいました。将軍家は一夫多妻制であったとはいえ、驚きの数字です。

 

家斉は、その子供たちを有力大名の跡継ぎや正室として送り込み、縁組を断られないように莫大な持参金(金の含有量を落とした小判)を押し付けたのでした。その作戦は全国の大名を武力でなく、自分の血筋で染め上げようとしたもので、無類の色好みの遺伝子があったからこそ実現できたお話しです。たぐいまれな「後継者を残す繁殖能力」はギネスものだったと思われます。

 

歴史的偉業はともかく、ヒトの進化に必要な「より多くの子孫を残し、突然変異の確率を高めた」という点では、将軍徳川家斉の方が皇帝ナポレオンを上回ったということになります。

 

何で進化するのに男と女が必要なのか?

進化に必要な突然変異は、遺伝子のコピーミスによって起こります。あくまでも「ミス」ですから、そこに目的などありません。いつ起こるかわからない偶然によって、親には無い形質を持つ子が生まれるのです。

 

新型コロナウイルスで経験したように、細菌やウイルスはヒトに比べ圧倒的なスピードで分裂(大腸菌では1回10分程度)を繰り返し、DNAやRNAの偶然のコピーミスによって、生存に適した変異を勝ち取っています。

 

一方、ヒト1人の誕生は、親の出産年齢から考えて25年に一回程度の個体分裂となるので、「偶然の突然変異の回数」は、細菌やウイルスに比べてとても少ないと言えます。

 

ところが、男と女の有性生殖においては、授精によって両親から半分づつの遺伝子を子がもらうことで、(細菌やウイルスに比べたらまるで突然変異のように)子は親とは大きく異なる個体として生まれてきます。

 

つまり、コピーミスはゼロではないのですが、有性生殖においては多くの遺伝情報をダイナミックに入れ替えることで、生存に必要となる有利な遺伝子を温存し、不都合な遺伝子を隠すことができるのです。

 

細菌やウイルスは、何の意識や目的もなく分裂を繰り返し「コピーミス」を待っているかのようですが、男と女による有性生殖においては、少なくとも自分とは異なる優秀で元気な子を作りたいという意識がどこかで働いているはずです。

 

我々、有性生殖を行う生物にとって、「恋愛」とか「求愛」はとても複雑で大きなパワーを要するものなのですが、本能として「すべてに優先するように」プログラムされているのかも知れません。が、現代社会では「すべてに愛を優先させたら」ドえらいことになるので気を付けなければなりませんよね。

 

石田純一

 

え~、生殖医療の技術ってこんなに進んでるの‼

前回「数千年後、人類は完全に中性化して繁殖能力を失うのでは?」という投稿をしましたが、現在の生殖細胞研究は恐ろしいレベルに達しているので、二つの事例を紹介します。

 

京都大学iPS細胞研究所の斎藤通紀教授は、マウスiPS細胞から生殖細胞の「元」である始原生殖細胞を作り出し、そこから精子(2011年に成功)や卵子(2012年に成功)を作り、実際に、子供となるマウスをつくることに成功しています。

 

サムネイル生殖科学

 

また、2017年には米国フィラデルフィア小児病院の研究チームが、人工子宮システムの中で早産のヒツジを正常に発育させることに成功しています。

 

サムネイル人工子宮

 

現在の国際法では、「2週間を過ぎたヒトの胚を用いて実験してはならない」と規定しています。しかしながら、技術的には、男と女がいなくても、ヒト1人の細胞から子どもを誕生させ、お腹を痛めることなく(女性だけが長い間、胎内で子を育てなくても)可愛い赤ちゃんをゲットできるところまで来ています。

 

でも、これってダイナミックな遺伝子の組み換えがありませんよね。人類の進化にどんな影響がでるのでしょうか? そう言えばウチの犬、雑種の方が、血統書付きの純血種よりも賢くて丈夫だったな~。人間だって、クローンは絶対ダメだと思うのですが?

 

 

 

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