年配のオジさんに馴染みのあった「肺気腫」や「慢性気管支炎」という病名は、今ではCOPD(シー・オー・ピー・ディー)と呼ばれています。「何でも略して頭文字だけで呼ぶなッ!」とお怒りでしょうが、医療現場の皆さんがそう呼んでいるのですから仕方がありません。
COPD は、Chronic(慢性) obstructive(閉塞) pulmonary(肺) diseaseの略称ですが、日本語で「慢性閉塞性肺疾患」と呼ぶよりは、「COPD」と言った方が「噛まないから良い」ということでしょうか?
なら、いっそのこと「コップ・ディー」と呼んでよ~⁉
「COPD」と「喘息」って見分けられるの?
「COPD」と「喘息」は、どちらも息が吐きにくくなる病気で、いずれも気管支の炎症が関係するので症状が出ている時は検査結果が共通となります。また、喫煙と喘息は因果関係があるので、COPDと喘息を両方併発しているオーバーラップ(ACO=Asthma and COPD Overlap)の状態もあります。
ということで、簡単に「あなたはCOPDです」、「あなたは喘息です」といい切れないことが多く、特に高齢者の場合、COPDと思っていたら実は喘息であったというケースもあるようです。
じゃ~、「COPD」と「喘息」の臨床的違いはどうよ?
基本的な原因と特徴は?
図のとおり、小児の喘息は9割以上がアレルギー(ダニなどのアレルゲンが原因)で起こりますが、成人の喘息は5~6割がアレルギーで、残りが生活習慣やストレスで起こります。大人の喘息は、子どもの喘息よりも重症化しやすく、治りにくいのが特徴です。
一方、COPDは主にタバコの煙(他の有害物質でも起こりうる)を長期にわたって吸入することで起こります。COPDは喘息に比べて可逆性に乏しく、発作的症状は出にくいのですが、労作時の息切れが強く出ます。
喘息は、小児から高齢者まで全年齢層で発症しますが、COPDは40歳以上の中高年層に多い特徴があります。
治療薬は?
喘息は、キラーT細胞(CD4陽性T細胞)が局所(肺や腸など)に誘導する好酸球による炎症(検査データ:血中の一酸化炭素量が増加)であるのに対し、COPDは、全身を巡る血液中の好中球やヘルパーT細胞(CD8陽性T細胞)が関与する炎症(検査データ:一酸化炭素量は変化なし)であるとされています。
※思いっきり省略してますので、詳しくは前回投稿(免疫編)も参考にしてください。
そのため、両疾患の薬物療法は異なり、喘息の長期管理薬(コントローラー)は、吸入ステロイドが第一選択薬となります。また、吸入ステロイドに加え、ロイコトリエン受容体拮抗薬、気管支拡張薬、抗アレルギー薬が併用されます。また、発作時の治療薬(リリーパ―)には、短時間作用型のβ2刺激薬やテオフィリンを用いて、速やかに気管支を拡張しなければなりません。
一方、COPDの長期管理薬(コントローラー)としては、長時間作用型の抗コリン薬を第一選択薬として用います。また、β2刺激薬やキサンチン系薬も併用して持続的な気管支拡張を図ります。
吸入薬の苦手意識はどこから来るのだろう?
略称がよく使われるから?
冒頭でブチ切れましたが、吸入薬では、ICS(アイ・シー・エス)、LABA(ラバ)、SABA(サバ)、LAMA(ラマ)など、略称がよく使われるのでしっかり押さえましょう。
それぞれの語源と意味は以下のとおりです。
①ICS(アイ・シー・エス)は、inhaled corticosteroid(吸入ステロイド薬)の略で、喘息治療の第一選択薬です。強力な抗炎症効果があり、長期管理薬(コントローラー)の中心となる薬です。
②LABA(ラバ)は、long-acting β-agonists(長時間作用性β2刺激薬)の略で、ラバは気管支平滑筋を弛緩させて気道を広げます。効果が長時間続くため、発作の予防に用います。
③SABA(サバ)は、short-acting β-agonists(短時間作用性β2刺激薬)の略で、ラバよりも速やかに効果が現れるので、発作時の治療薬(リリーバ―)として喘息の発作時に使用します。
④LAMA(ラマ)は、long-acting muscarinic antagonist(長時間作用性抗コリン薬)の略で、COPD治療の第一選択薬となります。持続的に気管支の収縮を抑え、気道を広げます。
「絵とゴロで楽しく覚えるクスリの名前」は以下のとおりです。
製品名がダラダラと長いから?
吸入薬の製品名は、「薬品名」の後に金魚のフンみたいに「吸入器具名」がくっついています。吸入器の名称と特徴をしっかり押さてないと、どこまでがクスリの名前でどこからが吸入器具の名前かが分かりません。また、患者さんに合ったクスリの選択もできなくなるのでしっかりと覚えまょう。
ディスカスは丸いという意味で、エリプタはそのバージョンアップ版です。エリプタは一日一回の服用で済むことから、アドヒアランスの面で優れています。
シムビコートはLABAの位置づけですが、通称、“SMART療法(Symbicort Maintenanceand Reliever Therapy)”によって、発作時にSABAとして適用可能です。詳しくは次回投稿します。
くすりのレビュー、国家試験の勉強に役立つYouTube動画
yakulab info 下田武先生
喘息・COPDオーバーラップに対する薬物療法:9分30秒
気管支喘息:18分10秒
慢性閉塞性肺疾患(COPD):13分55秒
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