緑内障目薬を「勝手に中断したらダメだっちゅーの!」これって古い?

だっちゅうの 眼科

前回4回目投稿(プロスタグランジン目薬)に続き、緑内障に関する投稿は今回で5回目(β遮断薬他)になります。
緑内障の作用機序等については、第1回(市販の目薬)第2回(緑内障の種類)、第3回(緑内障目薬)をご覧ください。

緑内障目薬の中断率を下げるには、どうしたらいいの?

 

だっちゅうの

 

一般的な緑内障、特に日本人に多い正常眼圧緑内障は非常にゆっくりと病状が進行するため、極論を言うならばその人にとって一生の病状管理が必要となり、クスリや医師とも長く付き合わなければなりません。

 

おまけに、緑内障の目薬は、眼精疲労やドライアイの目薬のように眼の安らぎを求めるものではないので、基本的にさし心地は良くありません。なぜなら、目の表面にストレスをかけてでも眼圧を下げることを目的にしているからです。

 

そのせいでしょうか? ファイザー社の調査によれば、緑内障患者のうち、患者自身の判断で点眼治療を中断した人の割合(=中断率)18.7%で、特に40代男性の中断率が4人に1人と最も高い結果となりました。

 

「症状が自覚できない」「治療効果の実感がわかない」などが中断理由で、病気や治療に対する理解がたいへん低いことが浮き彫りとなりました。高血圧症や糖尿病と同じく、患者と医師によるアドヒアランスの重要性が再確認された訳です。

 

そもそもクスリには、「やめられる薬」「当分やめない方がいい薬」「一生やめられない薬」3つがあると言われています。

 

「やめられる薬」の代表例は、抗生物質やステロイド薬などで、感染や炎症などの原因が消失すれば医師の指導で中止になりますし、自覚もできます。また、「当分やめない方がいい薬」は、精神科や生活習慣病の薬で、悪化や再発予防の治療方針によっては数年~数十年と服用しなければならない場合もありますが、いずれ寛解や完治によって減薬できる事例となります。

 

一方、「一生やめられない薬」は、生理的物資の欠損を補い続けなければならないクスリで、甲状腺機能失調症や神経伝達物質が不足するパーキンソン病など、半永久的に少量のステロイド剤やホルモン剤を補充するための治療薬です。また、高血圧や緑内障のクスリも、死ぬまでの卒中や失明のリスク低減のために一生服用した方が良いとされるクスリです。

 

いづれにしても、医師から治療方針を一方的に患者に伝え同意を得る「インフォームドコンセント」や医師が決めた治療指針を患者に一方的に守らせる「コンプライアンス」という言葉は、「だっちゅーの」と同様、死語に匹敵する言葉になってしまいました。

 

今は、患者も治療方法の決定過程に参加・賛同した上で、 その治療方法を自らの判断で実行する「アドヒアランス」によらなければ、中断率を下げられないと言われています。

 

薬局の現場でも、稀に出る副作用の説明(不要な心配をあおる)よりも、病気の原因や治療のしくみを分かりやすく説明した方が患者さんのためになると思うのですが…。

 

今回覚えるクスリの一覧はこれだ!

ちょっと数が多いので、使用頻度の比較的高いもの(黄色塗りつぶし)ゴロにしました。
今回は自律神経の遮断薬/刺激薬、酵素阻害薬(赤枠)について投稿しますが、複合薬については別の機会に投稿します。

 

覚える表

複合薬

 

緑内障目薬を絵とゴロで楽しく覚えよう!

β受容体遮断薬

もともと高血圧の治療薬として使われてきたクスリですが、眼圧も下げる(房水の産生抑制)ことがわかったので目薬として製品化されました。 一般名のステムは、お馴染みの「~ロール」です。

 

全身の副作用に配慮し、喘息や閉塞性呼吸器疾患、除脈の人には使えませんので注意が必要です。また、局所の副作用として角膜上皮障害があります。

 

β受容体

 

チモプトール(チモロール):
β遮断薬(非選択性)に分類される緑内障治療薬で、古くからスタンダードなクスリとして繁用されています。瞳孔には作用しないので、暗く見えたり、まぶしく見えることはありません。

1日1回の点眼で済むように長時間作用型の製品が登場し、チモプトールXEとリズモンTGがこれにあたります。ごく少量が体内に吸収され、全身性の副作用があらわれる可能性があるため、心臓病や喘息のある人には使用できません。

 

ミケラン(カルテオロール):
ミケランLA点眼液は長時間作用型(1日1回の点眼)で、アルギン酸の粘性によって滞留性を高めた製剤です。チモプトールに比べ、心臓、呼吸、脂質代謝など全身への影響が小さく、また目への刺激作用も弱いことが知られています。ただし、使用上の注意が必要なことには変わりはありません。

 

α1遮断薬とα2刺激薬

「α受容体への遮断薬と刺激薬という反対の作用で、どうして眼圧が下がるのか?」という素朴な疑問が湧いてくると思います。ちょっと複雑なんですが、α受容体はα1とα2のタイプ(サブタイプ)があり、中枢(脳など)にあるα2受容体を刺激すると、末梢における交感神経の活動が抑えられ、血管が広がり血圧が下がります。逆に、末梢の交感神経にあるα1受容体を刺激すると血管が収縮し血圧が上昇します。

α2は、遠い中枢からの間接命令だから(誰かがヘマして⁉)途中で逆になってしまう、α1は、地方での直接命令だからそのまんま伝わるというようなイメージでしょうか?

 

α1遮断薬は比較的副作用の少ない薬ですが、逆に効果があまり強くありません。 そのためPG製剤やβ遮断薬の目薬が使えない方や追加での効果を期待する場合に用います。

 

一方、α2受容体を刺激する薬(アイファガン)は、2012年に販売された比較的新しいタイプの点眼薬で、β遮断薬と同等の効果が期待できるとされています。さすが中枢命令ですね…。

 

α受容体

 

デタントール(ブナゾシン):
眼局所のα 1 受容体を選択的に遮断することにより、副流出路(ぶどう膜強膜流出路)からの房水流出を促進し眼圧を下降させます。緑内障においては、眼血流の低下が病因の一つであるとも言われ、本剤は、末梢血管のα 1 受容体を遮断して血管を拡張し、眼血流量を増加させるとも考えられています。

 

 

アイファガン(ブリモニジン):
緑内障目薬の中には、「眼圧下降効果」だけではなく「血流改善効果」もある!と主張しているものもありますが、アイファガンは、「神経保護作用」もあるのではないか?と期待されているそうです。

また、アイファガンは、β遮断薬と異なり全身的にも比較的安全に使え、さし心地もそれ程悪くないようです。副作用として眠くなったり、数か月の使用でアレルギー症状が出るとの報告があります。

 

炭酸脱水素酵素阻害薬(CAI)とROCK(ローキナーゼ)阻害薬

炭酸脱水酵素は、眼(毛様体)以外にも、腎上皮、赤血球、脳などにも存在し、生体内で水と炭酸ガスを急激に反応させて炭酸を生成させる酵素です。アセタゾラミド(商品名:ダイアモックス®)のように内服薬や注射薬の剤形を持つクスリもありますが、全身に影響を及ぼすため主流は点眼薬になっています。

 

Rho(ロー)という物質は、細胞の骨格というべきアクチンや微小管に関連し、RhoキナーゼがRhoに働くと平滑筋が収縮します。Rhoは、房水の排水路である毛様体筋や線維柱帯に多く存在しているため、Rhoキナーゼが働くと毛様体筋が収縮して排出路から房水の流れが悪くなります。Rhoキナーゼを阻害することで、房水の排出が良くなり眼圧が下がります。

酵素阻害剤

 

トルソプト(ドルゾラミド):
エイゾプト(ブリンゾラミド):
効果は、第一選択薬群より若干劣る印象はありますが、全身的に副作用を起こすことがほとんどなく比較的安心して使える目薬となっています。ただし、少し粘度があるためか、さし心地があまり良くなく、充血したり、しばらく目がかすんだり、さし残しがまつげについたままだと乾燥して白くこびりついたりすることがあります。

 

グラナテック(リパスジル):
グラナテックは2014年に登場した目薬です。点眼すると必ず充血が起こり、充血によって点眼できたか判定できるほどです。プロスタグランジン製剤と違い、充血が軽くなることはなく、何ヶ月たっても必ず充血します。

ただし、充血する時間は約90分と決まっていて、その時間が過ぎると完全に元通りになります。充血対策としては1日2回の点眼を朝早く夜遅くにすることです。(人に会う時間帯には目は充血していないことになる)

 

 

くすりのレビュー、国家試験の勉強に役立つYouTube動画

yakulab info 下田武先生

緑内障治療薬 前編(房水産生抑制薬):14分09秒

 

 

緑内障治療薬 後編(房水流出促進薬):15分08秒

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