「芸能人は歯が命」なら「サラリーマンは目が命」高い目薬が売れる理由

サラリーマン命 眼科

今回から目薬について投稿します。
ドラッグストアには、「疲れ目」「ドライアイ」「目の充血」「ものもらい」など、多岐にわたった品ぞろえがありますが、その成分についてはどれも物足りなさを感じます。前回投稿した頭痛薬に比べ、「効きそうな成分が少しずつ濃度を薄くして何種類も入っているなぁ~」というのが印象です。

 

例えば、価格が1,600円以上もする超高級目薬(各社のプレミアムシリーズなど)では、テトラヒドロゾリン、ネオスチグミン、アラントイン、グリチルリチン、硫酸亜鉛、クロルフェニラミンマレイン酸、ビタミンB6、パンテノール、α-トコフェロール、アスパラギン酸、タウリン、コンドロイチン等々が配合され、とにかく目に効きそうな成分「これでもか!」と言わんばかりに低濃度で詰め込まれているのです。

 

サラリーマン命

 

サラリーマンにとって目は命!大切な商売道具を守るため、超高級目薬がよく売れる理由は理解できます。しかし、「高いから絶対に効くはず!」と過信して、ダラダラ使っていると、隠れた病気が悪化することもあるので注意が必要です。

 

「目の充血をとる」ってどういうこと?

市販薬において「充血をとる成分」は血管収縮薬で、「塩酸ナファゾリン」「塩酸テトラヒドロゾリン」「塩酸フェニレフリン」が含まれています。

 

これらのクスリは血管を収縮させて、見た目の「赤み」をとってくれますが、充血には何らかの炎症が起こっていて血管が拡張している状態です。血管収縮により充血(目の赤み)がとれたからといって根本原因が消失した訳ではありません。

 

クスリが切れるとかえって充血が誘発される場合もあり、何度も使っているうちに、血管収縮反応が鈍くなり、常に目が真っ赤になってしまうこともあります。いわゆる「リバウンド」を繰り返さないことが重要です。
また、コンタクトレンズの長期装着による酸素不足状態で、血管収縮薬を点眼すると、さらに酸素不足が助長されるので注意が必要です。

 

「抗菌目薬」と書かれた市販薬の実力とは?

ものもらい用の市販薬には、抗炎症成分や抗菌成分(抗生物質)が低濃度で含まれているので、それなりによくなると思われますが、もし、改善しないと耐性菌を作る可能性があり、「効かない抗菌目薬」をダラダラとさし続けることになります。

 

市販の目薬で抗菌成分として使われているのは、サルファ剤「スルファメトキサゾール」の1種類しかなく、このクスリは抗生剤の中ではかなり弱いランクとなります。涙にも免疫力(自浄作用)があるため、もし、軽い症状のものもらいが治ったとしたら、目薬効果よりも免疫力(自然治癒力)の方が貢献した可能性があります。

 

サルファ剤

 

ものもらいは、身の回りにいる細菌が瞼の皮脂腺(マイボーム腺)まつげの根元に入り込んで、化膿性の炎症を引き起こして瞼が腫れる感染症です。また、結膜炎は、細菌が結膜に感染して起こることが多く、白目が充血したり、目ヤニが多く出たりします。一方、ぶどう膜炎は、結膜炎と異なり、目の中の炎症なので市販の目薬では手に負えません。

 

ものもらい

 

結膜炎ほか

数日点眼しても効かない場合は、躊躇することなく眼科を受診することを勧めましょう。

 

「処方薬では目がスッキリしない!」理由は?

市販の目薬に比べ、医者から処方された点眼薬は「スッキリした感じがしないよ!」「もっとスッキリするクスリはないの?」と言われることがあるようです。

 

市販薬に含まれる「スッキリ成分」はメンソール系、カンフル系といった成分で、処方薬には含まれることは殆どありません。なぜなら、もし、目に炎症があると非常に刺激が強く、しみた感じが強くなって悪化する恐れがあるからです。

 

処方薬はむしろ、「いかに刺激を感じず長期に渡って使用できるか」ということに重点を置いているのです。逆に言えば、「疲れ目にスッキリ爽快感が欲しい」というなら、「医者に行かずドラッグストアーにGo!」ということになります。

 

「ビタミンA入りの目薬」って処方薬にはないの?

「ビタミンA」は主に乾き目(ドライアイ)に有効とされ角膜の環境を良好に保つヒアルロン酸やムチンの産生を促すことが国内で実施した臨床試験で報告されています。

 

日本メーカーのライオンが、独自の界面活性技術を駆使して脂溶性であるビタミンAを水溶液中でも安定化させることに成功し、2018年にはコンタクト用目薬「スマイルコンタクトEXひとみリペア」にもビタミンAを配合しました。最近では、ビタミンAを含む他社の目薬が続々と登場しています。

 

ところが、海外においてはビタミンAの点眼効果に関する研究や論文が乏しく、世界的なトレンドには至っていないようです。市販薬が医療用医薬品をリードして、いづれ保険適用のクスリになる日が来るのでしょうか?

 

「防腐剤が入っていない目薬」ってどうよ?

目薬の防腐剤として「塩化ベンザルコニウム」が広く使われていましたが、「その濃さと接触時間によって角膜を傷つける場合がある」という報告があってから、敏感な消費者が「防腐剤の入っていない目薬」を求められるケースが増えているそうです。瞬きをしていれば涙で洗い流されてさほど問題はないのですが…

 

そのため、ライオンの「スマイル」シリーズのように「防腐剤無添加」と表記し、目薬に含まれる緩衝剤の組み合わせによって防腐効果を得ているケースがあり、開封後1~2カ月なら大丈夫とのことです。

 

また、佐藤製薬の「ノアールCL」は、点眼後に涙成分となる亜塩素酸ナトリウム(NaClO2)を保存剤として使用して、他社との差別化を図っているようです。

 

ノアールCL

 

 

くすりのレビュー、国家試験の勉強に役立つYouTube動画

yakulab info 下田武先生

眼に作用する薬①(散瞳薬、縮瞳薬):13分40秒

眼に作用する薬②(緑内障、房水の産生と流出):13分58秒

眼に作用する薬③(緑内障治療薬):10分49秒

眼に作用する薬④(白内障治療薬、加齢黄斑変性症治療薬):9分52秒

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