「目の動きと緑内障を知らずして、服薬指導はできない!」な~んてね

見出しの絵 眼科

 前回投稿は「市販の目薬」について投稿しました。今回は緑内障について2回に分けて投稿します。
処方薬に限らず市販薬においても緑内障の患者さんに注意を促すクスリは山ほどあり、投薬や販売時には患者さんからのヒアリングが重要です市販薬の代表例としては、風邪薬に含まれるジフェンヒドラミンやマレイン酸フェニラミン、鎮痙薬に含まれるブチルスコポラミンなど、「抗コリン作用」を有するクスリには注意が必要です。

 

このような場合、お決まりの注意として「緑内障の患者さんは使用しないでください。緑内障のタイプによっては急激な眼圧上昇による眼痛、頭痛、吐き気といった緑内障発作を引き起こす可能性があります。ただし、緑内障の患者さんにすべてに起こるわけではありません。」などと、説明することになります。

 

ここで突っ込まれそうなのが「緑内障のタイプ?」「すべての人には当てはまらいの?」という点で、目の動きや緑内障についてある程度の知識がないと石地蔵のようにダンマリを決め込まなければなりません。

 

見出しの絵

 

わが国では、40歳以上の約20人に1人が緑内障を発症しているといわれ、視覚障害原因の第1位となっています。けっこう身近な病気なので、この際、基本的なことを押さえましょう。

 

目には「遠近調節」と「明暗調節」があるけど、どっちがムズイ?

ロボットの動きを見れば分かりますが、モノを動かすには、どっちかを引っ張り(収縮)、どっちかを緩める(弛緩)システムが必要です。
目の遠近調節では「毛様体筋」(筋肉でない)チン小帯」が、明暗調節では「放射状に並ぶ瞳孔散大筋」「同心円状に並ぶ瞳孔括約筋」が、お互い伸びたり縮んだりしてピントや明るさを調節しています。

 

◎遠近調節のしくみ
遠くを見るときは、毛様体筋が外側に広がり(弛緩),チン小帯を引っ張ることで水晶体が薄くなります。また、近くを見るときは、毛様体筋が収縮して、チン小帯のテンションが下がり、水晶体は自らの弾性力で厚みを増します。

遠近調節

 

 

◎明暗調節のしくみ
瞳孔は、二つの筋肉によって開閉します。瞳孔括約筋は、肛門や尿道の括約筋同様、環状の筋肉で、巾着袋のように口が開いたりすぼまったりします。一方、瞳孔散大筋は放射状に並んだ筋肉で、筋肉の収縮と弛緩は、瞳孔括約筋と逆になります。なんだかややこしいのですが、素早く対応するには、どうしても二つの筋肉が必要なんでしょうね。また、下図のとおり、正常な目であっても瞳孔が散大すると隅角は狭くなります。

 

明暗調節

 

「房水」と「涙」ってどう違うの?

房水」は、角膜・水晶体・硝子体など血管のない組織に栄養を与える役割をもっており、目の中の毛様体で作られます 毛様体から、瞳孔および隅角(ぐうかく)にあるフィルター線維柱帯を通って、シュレム管に集まり、静脈へと流れ出します。(主流出路)  また、流量は少ないのですが、房水はぶどう膜と強膜の間からも流れています。(副流出路)

 

緑内障は、房水の出口が狭かったり、繊維柱帯部が目詰まりして房水の流れに障害が起こり、眼圧の上昇により視神経が傷害され、見える範囲(視野)が狭くなる病気です。早期発見が最も重要になります。

 

房水

 

「涙」は、ただの塩水ではなく、目の表面を保護するためにいろいろな成分が含まれています。目の表面はツルツルしているので、ただの水ではすぐに滑り落ち、表面に留まることができません。さらに、涙は体温とほぼ同じくらいの温度にあるため、蒸発しやすくなっています。

 

それらを解消するため、「涙」にはネバネバした成分(ムチン層)があり、目の表面に留まれるようになっています。また、蒸発を防ぐため、マイボーム腺による脂の層(油層)があります。従って、「房水」と「涙」は、守備範囲も成分も全く異なる体液となります。

 

ドライアイは「涙の病気」とも言われ、涙の性質や量が低下することで、角膜や結膜の環境が悪くなる状態をいいます。病気の名称から「目が乾く病気」をイメージしますが、実は、涙は出ているものの、蒸発が早く、目に留まれないなど涙の三層構造が崩れてしまうことがドライアイの症状なのです。

 

涙

 

 

 緑内障のタイプって、どんだけ~ あるの?

一口に緑内障といっても、いくつか異なるタイプがあり、大別するとした図のようになります。

分類表

 

開放と閉塞

 

開放隅角緑内障
原発開放偶角緑内障は、毛様体で作られた房水が図のように線維柱帯で流れが悪くなり、眼圧が上昇します。何らかの原因(原因が解らないので「原発」という)で線維柱帯が目詰まりをおこしてしまうことが原因です。眼球内の圧力が上がることで、視神経に障害をきたします。病状の進行は、眼圧の高さ、もしくは視神経の圧力に対する感受性によって個人差があります。

 

原発開放偶角緑内障は、房水の排水路は開いているため、眼圧が高くならないケース(日本人に多く、正常眼圧緑内障に分類され眼圧は20mmHg以下で推移)が多いのです。それでも、眼圧をさらに下げることで、視神経がダメージを受けにくくなり、視野が悪くなることをできるだけ長く予防できるのです。

 

従って、原発開放偶角緑内障の患者さんについては、房水の排水路が開いていることを前提とし、睡眠薬や内視鏡検査に使うクスリの内服薬や注射薬について制限がありません。

 

閉塞隅角緑内障
原発閉塞隅角緑内障は、毛様体で作られた房水が虹彩と水晶体の間で流れにくくなり、房水が溜まり、虹彩が前に押し付けられ隅角を塞いでしまいます(瞳孔ブロック)片方の眼が原発閉塞偶角緑内障の場合は、ほとんど両眼が同じ症状が出現することから、もう片方の眼も同時に予防的な治療を行います。発症速度によって、慢性原発閉塞隅角緑内障と急性原発閉塞隅角緑内障に分けられます。

 

急性原発閉塞隅角緑内障の場合、急激に隅角が塞がってしまい、房水が眼の中に溜まり、眼圧が急上昇し、視神経に障害を与える場合があり、一晩で失明してしまうこともあり、緊急の場合はすぐに手術(急性発作時はレーザーで虹彩を切開する)が必要となります。急性原発閉塞隅角緑内障の症状としては、激しい頭痛、眼の痛み、嘔吐などがあります。症状からくも膜下出血と間違われる事もあります。

 

また、白内障を併発している場合は、白内障手術を行い、水晶体を人工レンズに置き換えることで隅角を広げることができます。

 

薬物療法はどうなってんの?

緑内障治療薬は、房水の排出を促進(主流出路、副流出路の流量アップ)したり、毛様体における房水の産生を抑えることで眼圧を下げます。

 

 

クスリの種類

 

現在使われている主な目薬は大きく分けて6種類あります。
プロスタグランジン(PG)関連薬(FP2受容体作動薬)(キサラタン®、タプロス®、トラバタンズ®、ルミガン®)、β遮断薬(チモプトール®、ミケラン®など)、炭酸脱水素酵素阻害薬(トルソプト®、エイゾプト®)、α2作動薬(アイファガン®)、ROCK阻害薬(グラナテック®)、EP2受容体作動薬(エイベリス®)ですが、
詳しくは「絵とゴロで楽しく覚えるくすりの名前」で、次回投稿します。

 

 

くすりのレビュー、国家試験の勉強に役立つYouTube動画

yakulab info 下田武先生

眼に作用する薬①(散瞳薬、縮瞳薬):13分40秒

眼に作用する薬②(緑内障、房水の産生と流出):13分58秒

眼に作用する薬③(緑内障治療薬):10分49秒

眼に作用する薬④(白内障治療薬、加齢黄斑変性症治療薬):9分52秒

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