前回は「緑内障の種類」や「目の動き」について投稿しましたが、今回は「緑内障点眼薬」について投稿します。
緑内障点眼薬の目的は、眼圧を下げて視野障害が進まないようにすることです。そのために目薬にできることは、「房水流出の促進」と「房水産生の抑制」の二つしかありません。
それなのに! 目薬の種類はやたらと多く、作用機序もゴチャゴチャしていて、「緑内障目薬」が苦手だ!と思っている人は多いのではないでしょうか?
今回、そのゴチャゴチャ感を一掃するための投稿となりれますが、かえってゴチャゴチャ感に拍車をかけてしまったら…。ス、ス、スイマしぇ~ん! ナンマンダブツ、ナンマンダブツ…。
今回覚える一覧はこれだ!
プロスタグランジン関連目薬のゴチャゴチャ感を斬る!
プロスタグランジン製剤は、緑内障点眼薬の第一選択薬として最も使用頻度が高いのですが、生理作用が多岐にわたるため、ゴチャゴチャ感が強いです。スッキリするために図を作りました。
プロスタグランジン(PG)は、生体膜にあるアラキドン酸から酵素シクロオキシナーゼ(COX)によって産生される生理活性脂質です。構造は、風にそよぐ吹き流しのような形をしています。
図のように、前駆物質から4種類のプロスタグランジン (PGE2、PGD2、PGF2α、PGI2)とトロンボキサンA2(TXA2)が産生され、これらの5つを総称して「プロスタノイド」と呼びます。また、これらの物質はPG標的細胞に並んでいるプロスタノイド受容体を介して様々な生理作用を誘発します。
ちなみにトロンボキサンA2は、強力な血液凝集作用と、気管支や血管平滑筋に対する収縮作用があります。
プロスタグランジンの代表的な生理作用としては、子宮筋収縮,血管拡張,血圧降下,腸管収縮などが有名ですが、副流出路(ぶどう膜胸膜出路)からのチョロチョロ流出にも関与しているため、プロスタグランジンF2α製剤を投与することで、副流出路からのチョロチョロ流出が一層促進されます。
一方、2018年9月に販売承認された新薬「エイベリス®」は、日本で開発された最も新しい緑内障の治療薬ですが、吹き流しのようなプロスタグランジン骨格を持っていません。
ところが、プロスタノイド受容体のEP2受容体に選択的に作用することから「プロスタグランジン関連薬」に分類している参考書が多いようです。
選択的にEP2受容体を刺激することで、プロスタグランジンF2α製剤に比べて、、主流出路(線維柱帯流出路)のザーザー流出と副流出路(ぶどう膜強膜流出路)のチョロチョロ流出の両方から房水流出を促進します。
また、最大の特徴は「外見への影響」で、プロスタグランジンF2α製剤の副作用である「瞼に色がつく、まつ毛が伸びてしまう、目の周りがくぼむ」ということが出現せず、使いやすいクスリになっています。
自律神経に作用する目薬は、ゴチャゴチャ感の極み!
現在使われている主な目薬は大きく分けて6種類ありますが、特に自律神経に作用するクスリは、「刺激薬」と「遮断薬」があり、ゴチャゴチャ感に拍車をかけています。スッキリするために図を作成しました。
緑内障の第1選択薬であるβ遮断薬(チモプトール、ミケランなど)は、全身的な副作用が多く、狭心症、不整脈、喘息などを悪化させることが知られています。また、まれに疲労感や不眠なども現れ、長期連用で角膜が傷つくこともあります。
可能な限り全身症状が出ないように、点眼後は涙嚢(るいのうぶ)部を指先で(目頭のやや鼻寄り)押さえるように伝えなければなりません。緑内障の目薬は、強力ゆえに副作用のリスクが高いので、できることはやった方がよいと思います。
緑内障点眼薬は、患者の持つ持病によって副作用のリスクが異なるため、処方は患者に合わせたテーラーメイドが多くなります。複数の目薬を何度もさすことが煩わしく、忘れがちなことも多いことから、2種類の点眼薬を一つの点眼にした複合剤も多数でています。
ゲっ、降圧薬もそうですが、複合薬って商品名だけでは何が入っているか分かりません。これまたゴチャゴチャ感に拍車をかけていると思われます。ん~、ヤッパ、覚えるほか道はなさそうです。
次回は、「第1選択薬の絵とゴロで楽しく覚えるクスリの名前」について投稿します。
くすりのレビュー、国家試験の勉強に役立つYouTube動画
yakulab info 下田武先生
緑内障治療薬 前編(房水産生抑制薬):14分09秒
緑内障治療薬 後編(房水流出促進薬):15分08秒
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