前回に続き吸入ステロイド薬の投稿となります。
吸入ステロイド薬は、吸入器(デバイス)によって直接肺にクスリを届けることができるため、少ないステロイド量で有効な治療効果を発揮します。
しかしながら、患者さんが吸入器の使い方を理解していないと期待された治療効果が得られないため、処方箋を受け持った薬剤師さんは「丁寧できめ細かい服薬指導」をしなければなりません。
熱心なクリニックの先生だと、「担当した薬剤師がどのような服薬指導をしたか?」を聞いてくる場合もあるそうで、患者さんの病態や吸入手技の得手不得手を注意深く観察しておかなければなりません。藪・医者から、「この、藪・薬剤師がッ⁉」と言われないようにしっかり勉強しましょう。
でもご安心ください。諸説ありますが、藪医者とは、適切な診療能力や治療能力を持たない医師・歯科医師・獣医師を指す俗称です。従って、患者を診察し、治療することのない薬剤師には「藪」の冠は尽きません。但し、1283年の歴史書には「藪薬師」という記載があるそうです。
吸入器(デバイス)と吸入薬の分類
前回の復習となりますが、「吸入器(デバイス)」と「吸入薬」の分類は下記のとおりです。
①吸入器(デバイス)の分類
②吸入薬の分類
吸入薬でよく使われる略称は、ICS(アイ・シー・エス)、LABA(ラバ)、SABA(サバ)、LAMA(ラマ)なので下図を参考にしっかり押さえましょう。
それぞれの語源と意味は以下のとおりです。
①ICS(アイ・シー・エス)は、inhaled corticosteroid(吸入ステロイド薬)の略で、喘息治療の第一選択薬です。強力な抗炎症効果があり、長期管理薬(コントローラー)の中心となる薬です。
②LABA(ラバ)は、long-acting β-agonists(長時間作用性β2刺激薬)の略で、ラバは気管支平滑筋を弛緩させて気道を広げます。効果が長時間続くため、発作の予防に用います。
③SABA(サバ)は、short-acting β-agonists(短時間作用性β2刺激薬)の略で、ラバよりも速やかに効果が現れるので、発作時の治療薬(リリーバ―)として喘息の発作時に使用します。
④LAMA(ラマ)は、long-acting muscarinic antagonist(長時間作用性抗コリン薬)の略で、COPD治療の第一選択薬となります。持続的に気管支の収縮を抑え、気道を広げます。
ちょっと突っ込んだお話
シムビコートのSMART療法とは?
シムビコートは、気管支拡張効果を有するホルモテロール(LABA)と抗炎症効果を有するブデソニド(ICS)の配合剤です。
シムビコートは、他の吸入薬にはない「SMART療法(追加療法)」が認められています。SMART療法とは、Symbicort Maintenanceand Reliever Therapyの頭文字を取った略称で、コントローラー(長期の定期吸入薬)としての使用に加え、発作発現時にはリリーパ―(発作時の追加吸入薬)としての使用が認められています。
シムビコートのSMART療法によって患者さんの利便性は向上しましたが、1日の最大量を超えないよう注意しなければなりません。
セレベントの単独処方ってある?
現在、日本で使用できるLABA(配合剤でない長時間作用型β2刺激薬)は、販売開始順にセレベント→オンブレス(セレベントの発売からオンブレスまでに9年かかっている)→オーキシスの3種類となっています。
また、オンブレスとオーキシスの適応症がCOPDに限定されているのに対し、セレベントはCOPDおよび気管支喘息の両方に使用できることになっています。
セレベントは、発売当初、気管支喘息によく使われていましたが、吸入ステロイド(ICS)とセレベントの合剤であるアドエアが発売されて以来、現在では気管支喘息にセレベントが単独で喘息に処方されることはなくなりました。
くすりのレビュー、国家試験の勉強に役立つYouTube動画
yakulab info 下田武先生
吸入剤のまとめ(前編):11分06秒
吸入剤のまとめ(中編):10分15秒
吸入剤のまとめ(後編):11分52秒
コメント